「龍太は、俺をどう思う?」

 どうか、キモチワルイと言ってしまわないで、と春は思う。だが、その想いは心の中にしまった。龍太の気持ちを知りたい、ただ純粋に思ったからだ。
 龍太の答えはすぐに帰ってきた、あの、優しい笑顔と共に。

「なにも思わないっつの。好きな人が桐間ってのが気に食わねーけどな。」

 まるで、男、と言うことは現実では無いかのように龍太は笑って見せた。
 否定されるのが怖かった、友達になれたのに離れられるのを恐れていた。だから、すぐ出る答えさえ無意識に押さえていたのに。
 春は龍太の優しさに、言葉すら出なかった。

「あ、ほら、な。あいつ、わりぃ奴だけど、しゅんがそこまでいうなら否定しねーよ。うん、頑張れ。」

 また泣きそうになる春を泣かないようにする為に言ったのだろうか、また泣きそうになるから止めてくれ、と春は思い、無言で腹を殴る。なんだよ、ふざけた口調で言う龍太はいつもの龍太で、 友達が変わっていないと実感した。

「あ、でさ功士さんのこと、なんだけど」
「ああ、桐間のお父さんな。その人も苦労人だねー」
「凄く、いいひとなんだ。」

 そこで止めた春を、龍太は顔を覗き込む。唇を噛み締めて、ただ公園に敷いてある砂利を見ていた。
 龍太はなにも言わず、仕返しのように春の腹を優しく叩く。

「うへ、なんだ…」
「ばか、功士おじさんと桐間を仲良くさせるつもりのお前がなんでそんな暗くなってんだよ。強気で行け、強気で!」

 春の背中を大きな手のひらで押した。春からしたら腹に入った優しい手も、背中からの衝撃も痛かったがそれ以上に龍太の気持ちが嬉しい。
 目に涙をためて、頷く春に、龍太はにっこりと笑うが、すぐになにかに気付いたように声を上げた。

「な、なんだよ」
「今日さ、浩に何にも知らないで言っちゃったんだよ。春に口出しすんな〜ってさ。」

 後悔したように言う龍太に、春はそんな事を言っていたのか、と思う。だが同時に嬉しく思った。浩が嫌だった訳ではないが、龍太が自分と浩の異変に気付いてくれたことに。

「平気だよ、浩も気にしてないって」
「いやそれがよ、口出しすんなって怒られた。」

 あの、浩が?
 春は聞き返したかった。浩は春以外には冷たいが、怒ることはなかった。よっぽどのことをしたのかと思うが、龍太の話を聞いたところないので、龍太が浩の逆鱗に触れてしまったとしか考えられない。
 最近の浩、どうしたんだろう。
 春は考えていると、龍太が口を開いた。





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