泣いていたのに、春は自分でも驚くほどスムーズに龍太に話していた。
 内容は、浩のこと、功士のこと、桐間のこと。そして、桐間への想い。
 龍太は終始黙って聞いていた。話が終わると、安心か、気持ちの重荷が取れたからか、春はまた泣きそうになっていた。龍太はそれを見て一言だけ、春に言葉を掛ける。

「泣いていいよ」

 その言葉を境に春の涙腺は完全に緩み、蛇口でも捻ったかのように全て流れ落ちた。春はただ受け止めるだけの龍太の服に大きな染みを作るが、気にする余裕すらなかった。

「うぁ、うぅ…ぁあ、」
「うん、うん。」

 龍太もややもらい泣きをしながら、春の頭を撫でる。龍太の手は人一倍優しくて、甘えたくなった。
 時間はどんどんと過ぎていき、春が泣き止んだ時にはもうすっかり暗くなっていた。ごめん、と謝る春に龍太は笑って首を振るだけだ。
 何から整理すればいいか分からなくなっている春を見て、龍太は簡単に切り出した。

「桐間を…好きなのかどうか分からないって言ってたけど。だいたいなんで恋愛感情で好きって思ったんだ」

 龍太が一番聞きたいところである。正直、男の友達が同性を好きなど初めて聞いたし、男同士で恋愛感情などあり得ないと思っていた。悩みはそんなに深いか、と逆に龍太が頭を抱えたくなる。
 まだ好きの途中、だと言っているのだ。勘違いかもしれない。龍太は反対する気は無いが、少しそこに期待した。
 なにより相手は桐間であり、好きと言った春がどれだけ傷つけられるかは目に見えている。
 龍太の質問に、春は少しだけ間を置いて言った。

「俺は、桐間をいっぱい知ってるわけじゃない。けどなんかひかれて、なんか構いたくなって。なにをされても、傷付くコト言われても離れたくない。逆に逢いたくなって…おかしいんだ、俺。女の子相手にも、こんなに熱くなったことない」

 目に残った水滴を、拭きながら春は真っすぐな目で龍太を見る。龍太は、ムネが苦しくなった。
 ああ、勘違いなんかじゃない。しゅんは―…。

「しゅん、それはやっぱり恋だ。好きって、気持ちだ。」

 龍太の確信した言い方に、春は何も言えなくなった。龍太から言われてイヤってほど、納得した。
 好きかもと気付いた自分に、春は抵抗はなかった。逆に中途半端な気持ちは嫌だから、好きか好きじゃないかはっきりしたいとさえ思った。だがその気持ちは自分では気付かなかったが、違う。


 最初からスキ、だったのに自分でスキカモシレナイ、と塗り替えていたのだ。今、龍太の声ではっきりと自覚させられる。





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