ドアが開く音がして、テーブルで寝ていた功士は目を覚ました。もう少しで夏なのに、やはり夜は寒い。腕を擦りながら、玄関へと向かう。時計を見れば、夜中の3時をまわっていた。

「おかえり、理依哉」

 功士は寝呆けながらも、しっかりと笑顔を向ける。理依哉は、靴を脱ぎながらカバンを肩から降ろした。そのカバンを功士は持つとソファーに置いて、理依哉に話し掛ける。

「なぁ。尾形春って、分かるかい?」

 びくり、と理依哉の肩が揺れた。自分でやっておきながら、功士は驚く。今まで自分の行動や言動で理依哉が反応したことがなかったからだ。

「あいつがなに」

 理依哉が答えたのに気付き、功士は笑う。よく考えてみれば、受け答えしてくれたのも久しぶりに気がした。

「あの子は前から、僕の知り合いでね。僕が管理するマンションにいるよ。用があったら210だから行きなさい」

 理依哉は、素直に頷く。それもはじめて見る顔に、功士は春の存在の凄さに、ただ笑うしかなかった。


「そうだ。買ってきてほしいものとかあるかい? 明日買い物行くから、買っておくよ」
「書いた。」

 功士がテーブルの上に用意しておいた食事を見て、部屋に入っていった。功士はため息を吐きながら唯一やりとり出来るホワイトボードを見やると、そこに書いてあったのはいつも書いてある日常品、と

「は、理依哉、ひどいなぁ…」

 〈市販の弁当〉、その文字は功士の作ったものは信用していないと、表している。頭をかきながら功士は困ったように笑うと、おぼつかない足でテーブルの上の皿を取り、ゴミ箱へと捨てた。





[*前] | [次#]
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -