解決、と思いきや、春のなかではまだ解決はしていない。春は桐間を睨みながら、このやろう、と言いながら睨んだ。桐間はまたなにか自分がしたかと思うが、心当たりはない。

「なに」
「キスのやり直しはしない!」
「は、はあ? なんでだよ」
「キスしたことは無しにしてやるけど、次は好きって思った時にしろ。じゃなきゃこの前の二の舞になるし、ファーストキスが汚れるしな。」

 自分の言っていることは正しいと思う。桐間がキスをやり直したいと可愛いことを言ってくれるのは、実は凄く嬉しかったが、このままさせたらまた傷つくと思ったからだ。
 どうだ、正論過ぎて言い返せないだろうと、桐間を見ると、桐間はなんとも間抜けな顔をしている。なんでそんな顔をしているのか、と春は焦りながらも黙っていると、桐間はため息をついた。

「お前…まじでいってんのか、それ」

 呆れたように言うので、何かと思えば春の言ったことに不満があるらしい。
 それはそうだ、春の本心である。春は胸を張りながら、桐間を見た。

「そうだ!!」
「…そっか、だよね、お前が嘘つけるわけないよね」
「嘘なんてつくわけないだろ! 好きって人とじゃなきゃ…」
「そういう意味じゃなくて…はぁ。だから、俺の気持ち、やっぱ気づいてねーんだ…。」

 気付いていないとはなんのことだと春が桐間に聞こうとするが、これ以上何が、と聞いたら桐間が爆発する気がしたので聞けなくなる。桐間が自ら話してくれるのを待ってみると、やはり聞かなくても話してくれた。

「簡単に言えば。そうやってお前が言うなら、俺は今だってお前にキスしていいってことになるぞ」

 やっとはなしてくれたと、桐間が言った言葉を頭の中で変換してみる。だが、春の思考は止まってしまった。訳してみると、ありえない方向に行くからである。
 それは、桐間が自分を好きという答えだ。
 だがいろんな方向で考えても、どうやってもそうなるのだ。信じられない、期待してはいけないと分かっているのに、胸が嬉しそうに弾むのが分かる。

「きり、ま。それって」
「ああああ、最後まで言わせる気!?」

 今までに無いくらい、桐間は困っているようだった。困らせてはいけないと思ったのだが、春はどうしても言ってほしい。もう、勘違いしたくない、すれ違いたくない、隣にいたいという気持ちでいっぱいだった。春は精一杯の気持ちで、桐間のワイシャツの端を掴む。

「桐間、言ってよ」

 春が泣きそうになるのを見て、桐間は言わないわけには行かなかった。桐間は深呼吸も忘れ、春の肩をつかむとヤケクソになりながら口を開く。

「だから、俺も春が好きなんだよ! つ、つ、付き合おう」

 桐間はそこまで言うと、真っ赤に染め上がった。肩をつかむ力が痛いほどであるし、手汗を感じられるが、それが桐間の本気さを語っている。
 これは現実なのか。なら、ああもうだめだ。
 春は我慢していたはずの涙が溢れかえった。桐間はいきなり泣き出してしまった春に焦って揺らすが、春はつっかえて声も出せない。

「な、なんだよ、なんか嫌なのか? 不満なのか?」
「うっぁ、うれ、しいっ」

 嬉しい嬉しい嬉しい。
 聞こえているのかいないのか分からないが、春は何度も繰り返した。桐間は驚いた顔をしたが、すぐに笑う。


「…うれしいなら笑えよ、ばかやろう。」

 そう、うれしそうに言いながら、春の眼鏡をとった。春はつられて上を向く。そして抱き締めあって、春が目を瞑ると、桐間は暖かいキスをくれた。






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