続きを言いやすいように春はふったのに、何故か不機嫌そうに桐間は春の頭を叩く。何故だ、と桐間を見れば珍しく照れた顔をした桐間がいた。余裕が出来た春は可愛い、と思ってしまったが、なにか言いたくて照れているようだ。何を言い出すのだろうと、暫く待つと、桐間は、一つ深呼吸した。

「この前のキス、なんでしたのかわかんないまましたんだよね。衝動的に、というか、勝手にみたいな」
「ん? うん、やっぱりひでーな」
「ふぅ、黙って聞いてろ。…で、俺にとっては、それ、ファーストキスなわけ。なのに衝動的なキスがはじめてなんて嫌だろ? だから無かったことにして、またお前とやり直そうと思って。」

 春は桐間の言葉に、耳を疑う。よくよく考えてみれば桐間は今まで人間と関わりを持たなかった。そのため恋愛の話になると、全て初めてとなる。それくらいは分かるし驚きもしないが、まさかファーストキスなどということを気にしていたなんて思っても見なかった。可愛いところもあるのだな、と感心するが今はそれどころではない。
 最後の言葉に注目してみてくれ。

「や、やり直し…?」
「やり直し」
「ってことは、また、すんの?」
「この前はムードもへったくりもなかったし、俺の感情も乱れてたからな。今の俺は、俺の意志でお前とキスがしたいっていう気持ちがあるし。これは衝動的じゃない、思ってることなわけ。ほらこれならお前もムカつかないだろ?」

 桐間は分かりやすいように説明していると思っているようだが、なんかおかしい。
 キスをされたとき、した理由がわからないという桐間に激怒したのを覚えていた。好きでもないのに、と。なのに懲りずにするのか、春は腹がたってくる。
 なにがムカつかないだろ、だ! ムカつくわ、あほ!
 だが、そんな春を差し置いて、桐間が話を続けた。

「って言おうとしたのに、電話切りやがるし、変な後輩でてくるし、殴られるしな。いみわかんねー、謝れ」

 桐間はいつもの調子でいいながら、春に謝罪を要求する。ムカついていたはずの春は、冷や汗をかいた。
 プライドの高い桐間がファーストキスをやり直させろ、などと恥ずかしいことを言うにはかなりの勇気を出しただろう。なのに春は話を最後まで聞かないで勘違いしたうえに、一方的に責めた。自分がどれだけ愚かだったろうと、とても、後悔する。

「ごめん」
「…わかりゃーいいんだ」
「でもさ。」





[*前] | [次#]
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -