楽しくなるはずだった夏休みはただ悩んで終わり、もう始業式の日になっていた。春は遅刻ぎりぎりの時間に登校して、先生に怒られながら考える。
 いつもは夏休みは楽しくて早く過ぎてしまうのに、今年の夏休みは長く感じた。もちろん地元の友達や高校の友達と遊んだが、楽しいのはその場限りで帰れば悩む日々だった気がする。それもこれも桐間のせいであった。

「しゅん、おっはよーう、んで久しぶりー。間に合ったなー。」
「おはよう、久しぶり! 遅刻扱いじゃなくて良かったわ」
「しゅん、おはよう。」
「んー、おはよー!」

 春の席に元気よく挨拶をする龍太と冷静に挨拶をする浩が集まってくる。夏休みは、この二人と会っていなかったので、新鮮だ。様々な話をしていたが、やはり二人よりも、一緒に登校しなかった桐間が気になって、横目で彼の席を見る。どうやら鞄が置いてあるので、教室にはいないがさっきまでは居たようだ。春は桐間が来ていることに安堵しながらも、自分に勇気付けた。
 今までは夏休みなので自分が会いに行かない限り、会うことはないのだが、これからは学校がはじまる。このまま気まずい状態で毎日会うのは、春も嫌であるし、桐間も嫌気がさすだろう。せっかく学校に来るようになったのに、それを自分で踏み潰すのはどうかと思う。
 そこで時間がたっぷりあった夏休みに、春は考えた。もう自分は謝るしかないと、本音を言うしかないと。

「あ、桐間おはよー!」

 どきり、と心臓が跳ねた。春と桐間の事情を知るはずもない龍太は元気よく桐間に話しかける。桐間も珍しく、普通に挨拶を返しているので、機嫌は悪くないらしい。
 当たり前に桐間はこちらにやってきた。べらべらと話す龍太に桐間がうるさいともんくを言い、それを浩が苦笑いしたりする。なんだか、夏休み前そのままのようである。春はその桐間の姿に自分が置いていかれたような気がして焦った。

「ん、しゅんどーした。具合でも悪いのか」

 唯一、そのなかで違和感のある春に龍太が話しかける。春は首をふるが、逆に無理しているように見えた。
 この空気を壊したくない。
 春は思うが、どうにも普通にできない。桐間が、予想外のことをするので、怖くなってしまった。桐間の中で、春と縁を切ったことは気にするほどのことではなかったらしい。本当に何もかも、忘れられてしまったのだ。後悔しても遅いのだろうか、春は桐間を見れなかった。だが、

「保健室でも行けば、付いてくよ」





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