なんだかんだ、とやっているうちに、もう体育祭当日である。体育祭実行委員の龍太はもんくを垂らしながらも、大忙しだった。
 春は、と言うと、運動神経はいいので、体操をしっかりとして、やる気は満々。浩も運動神経はもちろん良いが、女の子が近寄ってくるので、やる気ではなかった。さて、あと少しで二人三脚が始まる。二人三脚に出る春と浩は、最後の練習のため、足に柔らかいタオルを巻いた。

「よーし、絶対勝つからな、いいか浩!」
「それ何回言ってんだ」

 浩は30回以上は言われたその言葉を聞いて、飽きれて笑う。春はそれを見てホッとした。
 ラブレターの件から浩が冷たい気する、と春は感じている。接すると普通の浩だが、前と違って見えた。幼なじみと気まずくなるなんて、気持ちが悪い。実際二人三脚の練習だって、ラブレターの件のせいで二回しか出来ていなかった。
 もう浩の恋路に口出すのやめよう、と春は心で誓った。

「行くぞ」

 フー、と深呼吸する。浩もつられて、ちいさく深呼吸した。練習だと言うのに妙に緊張する。さぁ行くぞ、組んでいる右手を春が動かすと、浩の左足があがった。いよいよ走る、
となったのだが、瞬間、アナウンスが入る。

『二人三脚が始まります。二人三脚に出場する生徒は、中央グランドに集まってください』

 二人して顔を見合わせる。そして笑いながら、そのまま中央グランドまで走った。
 グランドに立つと、隣は殺気に満ちている。高校生な彼らは、自分が脚光を浴びるために必死なのだ。春と浩の様子は変わらずただ準備をするだけで、春は眼鏡を外して、浩は春の肩に手を回した。
 教員がピストルを空に上げる。緊張感が走り、パンッ、と音が鳴り皆一斉に走りだした。周りを気にしている暇はなく必死、な皆に見せ付けるかのように、春と浩は話ながら走っている。

「なぁ、これ、勝てるよな」
「余裕」

 誰かが聞いていたら、反感を食らっていただろう。その圧倒的なスピードに誰も追い付かず、二人はあっという間にゴールした。
 同じ色のクラスが一気に寄ってくる、浩は女の子に囲まれ、春は男共に囲まれ、去年と同じ光景である。笑う春と、困る浩はそこから抜け出すと、握りこぶしをぶつけた。

「やっぱお前早えーな」
「早さは同じだ。」

 握りこぶしを解き、二人で手を掴むと、にかっと笑う。昔からの付き合い、それが二人をここまで合わせるのか。二人は同じタイミングで、離した。






[*前] | [次#]
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -