食事まではあと一時間あるようだ。汗もかいたことだし、と風呂に入る準備をしていると、後ろから衝撃を受ける。

「…木葉」
「嫌だな、そんなに怒んないで下さいよ」

 背中に張り付いてきたのは、相変わらず綺麗な笑顔を持っている木葉であった。木葉はそれだけ言うとタオルと浴衣を見せる。春は背中をさすりながらも、早く風呂に入りたいので、仕方なく立ち上がった。風呂へと向かう途中、ぺたんぺたん、と音をたてながら春は歩く。そんな姿を木葉はいとおしそうに見ていた。
 民宿と言えど風呂は広い。その上、他の部員達は練習後疲れのあまりすぐに入る気にはならないらしく、誰も風呂場にはいないので春と木葉の貸し切り状態であった。
 春は風呂場に着くと大きな浴槽にはしゃぎながらも、さすがに体を洗わないとはいれないと冷静になり、シャワーを浴びると、早速髪を洗い始める。木葉も真似をするように、シャンプーを手に取った。そしてシャンプーを取るときに、春が目に入り、頭を抱えたくなる。

「あの」
「ん、何?」
「それ、どうにか…してほしいのですが」

 木葉が目を向けた先には、春の下半身に掛けてあるタオルからさらけ出した足があった。タオルも厚い生地なわけではないので、濡れたことにより肌色が微かだが浮き出ている。
 木葉の発言がいまいち良く分からないと反応を見せる春に、木葉は頭を洗いながらため息をついた。

「俺からしてみれば春さんがそんな格好でいるってことは、一般人で言うと女の子の裸見てるようなものなんですよ。確かに少しは見たかった、ですけど、そんなに露出は控えてもらいたいなぁって。」

 明らかに木葉は動揺しながら言っていて、それを聞いて春も動揺せざるおえなくなる。
 桐間のこと好きだけど、大好きだけど、俺も男。女の子の体見たらそりゃ反応しないわけねーし、その気持ちは分かる。俺のからだでそうなるのは不思議だけど、木葉、そんな感じなのか。すまん。
 春は木葉に申し訳なく思い、意識されない程度に、且つ急いでタオルを巻き直した。木葉も咳払いをしながらごまかしているのが分かる。早く洗ってしまおうと、春は体を洗い軽く流すとすぐに湯船に入った。木葉はまだ洗っている。そんななか、ふっ、と木葉はなにかをおもいだしたかのように言った。




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