「見てよ、顔も真っ赤、心臓だって情けなく早くなりやがって。これでもまだ聞くの? 俺だってお前にドキドキしてんだよ」

 なんでわかんねえんだ、と半分逆ギレ気味に言われ春は言い返そうとするが、桐間がいきなり愛らしく思えて言い返すのはやめる。
 俺といっしょだ。
 胸に当てられた手を桐間の頬に当てると、桐間は熱が出たのではないかというくらい熱かった。春は笑いながら手をはなす。

「それって…」
「春さん」

 春がもう一度問いただそうとすると、扉でカバンを肩に掛けてにこやかに笑いながら呼ぶものがいた。春と桐間がそちらを向くと、桐間は誰、とだけ言う。その声は、低く教室に響いた。相手は名乗ろうとはしない。
 春は二人の険悪な見合いの間にいるのが気まずいのもあるが、まず今の桐間とのやり取りを見られていたかと思い慌ててかばんを取り、扉の方へと近づいた。

「木葉! ごめん、もう練習はじめてた?」
「いえ、教室からそのまま迎えに来ました。まだはじまりませんが、早めにいった方がいいでしょう?」

 声をかけたのは木葉だ。木葉は今までの雰囲気はすぐに取っ払い、手を差し出すと春に可愛く笑いかける。繋げとでも言うのか、春は不思議に思いながらも手ではなく肩をつかんだ。木葉は何も言わない。
 後ろで見ていた桐間は、座っていた椅子をしまうと二人に近寄った。その勢いに木葉は声をかけようとしたが、桐間の目的は春だったようであり、春の背中に手を添える。

「春、サヨーナラ」

 ワタシ、不機嫌デス。と全力で表しているように、桐間は木葉の肩をもった春の手をつねった。春は冷や汗をかきながら、肩にのせた手を離すと桐間を呼び止めようとするが、それはほかの手により拒否される。

「さあ行こう、春さん。行かないと溝呂木先生に怒られますよ? あと、聞きたいことあります」

 え、笑顔が怖い。
 春は桐間を気にしつつも、この前知り合ったばかりの怒る後輩を見て着いていくしかない。なぜかというと二人とも怒っていた意味もわからないが、その仲を良くしなければいけないからである。まず初対面の二人があんなに険悪なムードだったのか。
 今は部活に行かないといけないので桐間は追いかけられないため、近くにいる木葉から仲直りしなければならない。春ははや歩きの木葉の隣に並ぶと、苦笑いしながら肩をたたいた。すると、木葉は止まり春を見下ろす。

「…春さん」
「ん、んん? なにー? どうした木葉ー?」

 春は優しく木葉に聞き返すが、それは完全に機嫌取りであった。気付いてはいるが、何を思ったのか、木葉も優しく春をみる




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