あの後、龍太は気まずそうに浩がすきだと報告してきた。春も分かっていたので驚きもしなかったし、追求もしない。そんな春に安心したのか、龍太は今まで溜まっていたであろう浩の可愛い所やカッコイイ所などののろけを延々と話すのだった。
 春は所々思い出して考え事をしていると、もう時は放課後である。龍太と浩のことを考えていた。キューピッドになるというのも考えたが、二人なら野放しにしていてもくっつきそうだ。さて、浩と龍太は帰ったようだし、サッカー部に行こうとカバンを取ろうとすれば、その手を捕まれる。

「おい」
「!」

 春は声で誰かは分かった。目の前にいる人物であり、そしてその人物は出来るだけ会いたくはなかったのだ。そのため、鞄にある視線はあげることができなかった。だがその顔は、すぐに上げられた。

「無視? ずいぶんと感じ悪いね」
「む、無視じゃない!」

 言葉に反応して、春は前を向く。するとそこには怒ったように腕を組んだ桐間がいた。しまった、と顔をそらそうとするが、ここでそらしてしまったら話にならない。大人になろう、と春はそのままでいた。
 桐間は逃げるだろうと思っていたようで、春が目の前に居てもなにも言わずに手をつかんだままである。二人して手汗をかきながら、目を合わせた。

「桐間」
「ん、だよ」
「なんで、キスしたんだ?」

 瞬間、春を掴んでいた桐間の手は離される。春は光のような早さで退かされた手に驚くが、桐間を見ると、桐間は目を泳がせていた。つかんだ方は桐間だと言うのに、今にも逃げたがっている。
 こんな顔、はじめてみた。
 春は何も言わない桐間にいらいらしながらも、そんな顔を見て、少し癒された。

「なぁ、桐間」
「うっ、うるさい! いいでしょ、別に」
「良くない!」

 春の大声に、桐間はびくりと肩を震わせた。ただでさえ動揺しているのに、重ねていきなりの大きな音にびっくりしたのだろう。春は桐間から離された手をまた握ると、桐間の顔を覗きこむように見た。

「俺な、これくらいでドキドキするんだよ。桐間が笑うだけでも。なのにキスとかされてさ、俺、1日中頭から離れなかった。なあ桐間、俺お前のことすきだからなんだよ? 桐間は? 俺を好き?」

 春も自分で驚くぐらい、言葉が出てくる。切って話したほうが良かった春であるが、何故続けていったかと言えば、ここで一つ一つ言えば桐間が逃げると思ったからと、何より余裕なんて言葉さえないからだ。いっぱいいっぱいの春を見て、桐間はくしゃ、と顔を歪ませた。

「…ちくしょう」

 そこまで言うと、春から握られた手を乱暴に握り返すと春に顔を近付ける。またキスされるかと、春が後ろに下がるが、目的は違うらしい。桐間は春の手を胸に当てた。




[*前] | [次#]
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -