龍太は自信満々に言うが、目の前に居る春は、分からないと苦笑いさせた。そんな鈍い春にいらいらした龍太は歯軋りをする。

「だからよぉ! はたまた独占欲は愛情からきてんの! つまり、桐間はしゅんを好きってこと。あいつはバカだから、気付いてないんだよ!」

 お前もバカだけど、と付け足したが、春にはもう聞こえていないらしい。
 龍太の言っていることは聞き入れたい。龍太は春よりも何倍も恋愛について詳しいからだ。だが、今回のことについては素直に頷けなかった。

「それはねーよ、龍太」
「はあ? てめえどんだけ鈍いんだよ」
「違うって。いや、あのさ、だって桐間は心開いてくれたけどそれ以上ねーし、俺のことげすとかブスとかストーカーとか言うし、つーか…前はっきりふられたし」

 予鈴がなるのが耳にはいるが、どちらも動こうとはしない。龍太はため息をついて胡座をかくと、春を睨み付けた。

「わーったよ! そう思うなら思うしかねーなぁ。実際俺も奴がどう思ってるのかしらねーし」

 困ったように言うと、龍太は明るい髪をいじる。春も言い返す言葉がなく、体育座りをして龍太を見た。
 そういえば昨日、何か話したそうにしてたな。
 春は思い出して、タバコを探している龍太の膝をつつく。

「あ? なに」
「あのさ、昨日なんかいうことあったんだろ? ついでに隠してたし、浩にも聞かれたくない重大なこととか?」

 春は言うと、今まで渋い顔をして話していた龍太がいきなり頬を染めた。龍太が顔を赤らめたことなど今まで見たことがなかったため、春は驚いてしまう。
 なにかまずいこと言ったか、おれ!
 思っていると、龍太は口もとを押さえながらいった。

「浩にも、じゃない。浩だけに聞かれたくないねーんだ。俺の…気持ち。」

 龍太はそこまで言うと立ち上がり、トイレ、とだけ言って去る。ここまで言われて、龍太の顔を思い出して自分と重ねる。まるで桐間を思う自分のようだ。春は笑う。

「まじかよ」

 きっと龍太は浩のことが好きなのだろう。まさか自分の友達に自分のような気持ちを持つ人間が、現れるとは思ってなかった。
 でも浩と龍太なら、根拠はないけど上手くいく気がするんだよな。
 春は昔から浩を見てきた。浩の女嫌いは春はこれでもかというくらい味わっている、だからといって男には完全に心を開いているわけではない。つまり春以外を認めていなかった。自分以外に笑うことなかった、浩。だが今は、龍太に心を開いている。むしろ春より龍太に、というべきか。
 龍太になら浩を任せられるし、浩になら龍太を任せられるなあ。
 あとすこしで大事な友達二人がしあわせになれそうだと、春は自分のことも忘れて、嬉しそうに腕を組んだ。





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