ロミオと愛しのジュリエッタ






「俺の名前ってさ、不吉じゃね?」

「んー?」


柔らかい芝生の上をごろごろと転がって寝返りをしようとすると同じく横に寝転がっていたロミオにぶつかる。


「悲劇の主人公じゃん」

「ロミオ?」

「そーそー」


うつ伏せでぴたりと身体をくっつけたまま話をする。

「大丈夫だよ。私、死なないですもん」


ロミオとジュリエット。
2人の悲劇の話をぼんやりと思い出す。

なんとなく身をすり寄せるだけでは足りなくなって腕を伸ばす。特に抵抗することもなくロミオはブラッドに抱きしめられる形になる。


「だからね、先輩…死なないで下さいね」

「分かってるって」


ぐるり、と視界が反転して青空が見える。ふわふわと花びらが舞う。目の前にはロミオの悪戯っぽい顔があった。


「キス、するの?」

「して欲しい?」


ごち、鈍い音を立てて額と額がくっつく。甘い花のにおいにくらくらする。


「…先輩は?」

「ブラッド、それ余裕ってやつ?」


イタリア人らしい彼の甘いスキンシップにも最近やっと慣れてきていた。


「あのね、先輩。何があっても私が先輩を守ってみせるからね」

「それ、絶対に俺の台詞だろ」

「えへへ、知らなーい」


ブラッドが笑ってみせるとロミオは少し強引に唇を押し付けた。…やっぱりまだちょっとしか慣れていないみたいでカッと体温が上がり、小さく息がもれる。


「っ…ふあ」

「逃げんなって、ブラッド」

「に、逃げられないじゃないですか…んっ」


触れるだけの優しいキスが何度も繰り返される。まるでおまじないみたいだと思う。離れませんようにって。


「ブラッド、ありがとな」

「んっ、…ふ?あ…」

「俺のこと…好きになってくれてありがと」

「どう、いたしまして…大好き」


内緒話をするみたいに。こっそりと耳元で呟くと、もう一度だけ長めのキスが振ってきた。





(…んん、ロミオせんぱい…くるし…)
(お前たち…頼むから公共の場では慎んでくれ…)
(!た、たいちょっ…い、今の、み、みみ見ました?)






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