「     !」






おめでとうとか、いい年になるようにとか。今日一日で散々聞いたのにちっとも飽きない。
それでも一番声が聞きたい相手からは電話もメールもなにも寄越さないもんだから。それって結構寂しい。


「忙しいのかな…」


何度目かはわからないほど確認したメールボックスには目当ての差出人からのメールはやっぱり届いてないみたいだ。諦めてベットに飛び込む。

忙しくて、忘れてしまったのだろうか。何だかんだ毎年隣りで祝ってくれていたのに。
いやいや、彼女のことだから何てメールを書こうか、必死に文章を練っているのかもしれない。
なんだっていいよ。ただ、おめでとうって一言、今日が俺の誕生日だって覚えててくれたら。それだけでいいのにさ。


「バースト…」


彼女の名前を呼んでみる。返事なんて来るはずなかった。都合よく帰ってくるわけなんてないんだから。わかってる。でも寂しい。もう一回メールを確認しようかな。なんて、何回おんなじことを繰り返すんだといい加減に思ってきた。
あーほらやっぱり来てない。新着メールを受信中の文字、一件、二件、三件。
そのなかに見つけた差出人のメールをすぐさま開く。

本文はたった一言、お誕生日おめでとうございます、それだけだった。今日もらったメールの中でたぶん一番シンプルで短い文章だった。彼女らしいと言えばそうかもしれないけれど、そう思って小さく笑う。


「コウター!」

「うわっ!ってなんだアリサか…つうかさ、入るときはノックくらい」

「そんなことより早く来てください!」

「いやいやそんなことって…うおっ!?」


半ば引きずられてラウンジまで来ると、ドアを開けるよう催促される。ドアを開ければ、パンパンとクラッカーがなって反射的に目を閉じると、後ろから軽くぶつかって来た誰かの腕が首にまわってきて、そのまま抱きつかれる。コウタ、と。聞き慣れた声に気をとられて尻餅をつく。小柄な彼女を踏まないように何とか気を配った。


「っ…生まれてきてくれて、本当にありがとうございます。あっ…お誕生日おめでとうございます…!」

息を切らしたまま口早にそう言いきると、耳元で一言、追加で呟かれた言葉に、俺もだよばか!って叫ぶように返す。


「すみません。もう、戻らないといけないのですが、どうしても会って直接伝えたかったので…メール、途中まで打ってたんですけど…うまく言葉がまとまらなくて。あ、えっと、これ、大したものではないですが、プレゼントです」


こっちはユウからです。
じゃあ、戻りますね。

ふたつのプレゼントの包みを残して行ってしまいそうな彼女の手を繋いで止める。


「コウタ、あの…もう…」

「さっきの、もっかい言って…」

「え?」

「耳元で言ってくれたやつ」


だって、バーストからそう言ってくれることってなかなかないじゃん。言ってくれたらすぐ離すから、そういえば渋々といった感じでもう一回、後ろから抱き締められる形でバーストが耳元に顔を寄せた。ちょっとだけ、くすぐったい。


「      」

「うん、俺も」


手を離す。名残惜しそうに、襟足にぐり、と頭を擦り付けられる。あーなんだこれ可愛すぎるだろ。


「バースト、ちょっと立てる?」

「、? …っ!」

「ん…」


周りに見えないようにキスをすると、悲鳴じみた歓声があがる。たぶんふれあったところは見えてないと思うんだけど。た、ぶん。


「逆におみやげ貰っちゃったねえ、バースト」


バーストはユウに散々からかわれていたけれど、何故か俺はソーマとアリサにぺしぺしと頭を一発ずつはたかれた。

とりあえず当面のところは一連の流れを見ていた連中に散々冷やかされながら過ごすことになりそうだった。



ーーー


コウタさん
お誕生日おめでとうございます〜!

だいすきだ…!!


途中で♀主ちゃんがなんと言ったかはご想像にお任せします(*^^*)


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