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「ラケル先生、失礼します」


何度も訪れたラケルの部屋。いつも通り穏やかに微笑むラケルが居るこの場所にいつもとは違う気持ちで立つ。


「とうとうこの日が来ましたね」

「はい…!」

「ジュリウスとロミオに挨拶は済ませましたか?」

「これから正式にご挨拶しようと思っていて…」

「そう。それでは、私があまり長く引き留めてはいけませんね」


ふふ、とラケルは嬉しそうに微笑んでブラッドの手を取る。


「いらっしゃい、ブラッド……貴女に祝福があらんことを」





そわそわと落ち着かない様子でエントランスを動き回るロミオの様子にジュリウスは小さく笑う。


「ふっ…お前が緊張してどうする」

「だってさ…」

「気持ちは分かるが…ほら、噂をすれば新人が来たぞ」


少し大きめの裾が余った制服を着たブラッドがこつ、こつ、とブーツの音を響かせながら一歩ずつ近づいてくる。


「ジュリウス隊長」

「ああ」

「ロミオ先輩」

「うん」

「…本日付けで正式にブラッドに配属されることになりました」


そこまで言ったブラッドは少し照れたように笑いながら敬礼のポーズを取る。


「フェンリル極致化技術開発局所属ブラッド、第一期候補生のブラッドです。改めて、今日からお世話になります!」

「ブラッド…ようこそ、ブラッドへ。今まで本当によく頑張ったな」

「お前と仕事できんのまじで楽しみだなー!これからも一緒に頑張ろうな!」

「はいっ!ここまで頑張れたのは全部2人のおかげですっ」

「…!」

「わっ」


勢いよくブラッドは2人に抱きつく。よろけながらも2人はブラッドを受け止める。


「私、これからはブラッドとして頑張ります! 少しでも2人に…ジュリウス先輩とロミオ先輩にお返しができるように…!」


3人で顔を見合わせて笑う。
ジュリウス隊長が、手に持っていた端末を見て今後の予定を読み上げる。


「ブラッドは本日から配属とはいえ、既に演習も済んでいる。そのため、実地訓練を中心としてブラッドの戦力強化を図っていこうと思う。2週間後には、第二期生の適合試験及びに演習を行うため、それまでにはロミオとブラッドで簡単な任務は遂行できるようにしていくつもりだ」

「もう第二期の候補生が来んの?」

「確か…正式にブラッドの編成がされるんでしたよね」

「そうだな。先輩として恥ずかしくないよう振る舞っていこう」


ピピ、と小さな電子音がした。


「そろそろか…」

「ブラッドの初任務だな!張り切って行こうぜ」

「はい…!」

「…よし、ブラッド、出るぞ!」

「了解!」

「了解です!」


ジュリウス隊長と、ロミオ先輩と拳をつき合わせる。お互いを見合わせて頷くと、つきあわせていた手で神機を持ち、一歩ずつ足を踏み出した。





(キリキリと、車輪が音を立てる)
(荒ぶる神の新たなる神話……その序章は、貴方から始めることにしましょう……)


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