12 「ロミオは先程決めたルートで索敵を頼む」 「りょーかい!」 「お前は俺に着いてきてくれ。絶対に離れて行動するな」 「は、はい…了解です」 「時間だ…始めるか」 歩き始めたジュリウス先輩のあとに続いて、行こうぜ、と笑ってロミオ先輩も歩き出す。一度下を見て、神機を握り直し、深呼吸をしてから、2人の後を追いかける。 「ふう…始めます」 『お気をつけて』 「わ!」 慣れない無線機をつけた耳に違和感を感じていると、突然聞こえてきた声にビックリする。 「彼女はフランだ。ミッション中のサポートを担当している」 「フランさん…よろしくお願いします」 『初めまして。よろしくお願い致します。では、今回の討伐対象ですが……』 フランさんのサポートを基に、ジュリウス先輩は的確にミッションを進めていく。私も自分の神機は持っているものの、特に使うことなくジュリウス先輩のあとを追う。 「…ミッション完了。帰投準備に入る」 『お疲れ様です。早かったですね…ヘリの到着までしばらくかかります』 「ああ、分かった」 あっと言う間に今日のミッションは終わってしまったようで、ジュリウス先輩はふう、と息をはいた。お疲れ様です、と声をかけてからジュリウス先輩の隣りに並んでゆっくりと歩く。 「お外に出たい、なんてわがまま言ってすみません」 「いや…たまにはいいだろう。ラケル博士も室内にこもりきりよりは身体に良いと賛成していた」 「ありがとうございます。先輩たちはいつもこんな感じでミッションをしているんですね」 「ああ。…そのうちお前もその神機をアラガミに振るう日が来るんだな」 ジュリウス先輩にならって自分の神機を見る。言いようのないものを感じて、柄を握りしめると、ふいにジュリウス先輩が立ち止まる。 「…痛むのか?」 「…え」 「暗い顔をしている」 「い、いえっ、大丈夫です…痛くないです」 じっと、ジュリウス先輩は立ち止まったまま目をそらさない。整った顔に見つめられていると、徐々に顔に熱が集まってくるのが分かって、おずおずと口を開く。 「痛い、わけじゃなくて。その…ちょっとだけ…怖い、というか」 ゴッドイーターにはなりたくない。 フライアに呼ばれるまで、ずっとずっとそうに思っていたんです。 もちろん、ゴッドイーターさんがどれだけ大変で辛くて…立派なお仕事なのかは、人並みに理解はしているつもりです。 だからこそ、私には向いていないと思ったんです。 「誰かの命を背負うことも、誰かに命を背負ってもらうことも、私には、まだ…よく、わかりません」 ぽつぽつと、へたくそな言葉でしか話せない私の話をジュリウス先輩は黙って聞いてくれている。 「…えっと、すみません…あの、お話、聞いてもらってありがとうございました」 ぺこ、と小さく頭を下げると、ぽんぽんと頭に優しく手が触れた。顔を上げると、ジュリウス先輩が少しだけ困ったような寂しそうな顔で少し微笑んだ後、同意するようにひとつ頷いて、帰ろう、とそれだけ言った。 「はい…」 きし、と腕輪から責められるような音がした気がする。 知らない振りをして、ジュリウス先輩のあとを小走りで追いかけた。 (まだまだ弱虫で、ごめんなさい) (早く先輩たちみたいになれたら……いいのかな) . |