ゆきあそび






ミッションを無事終えて、素材集めをしながらメンバーを探していると。


「あー、降って来ちゃったね」


コウタの声にブラッドが上を見ると、白いものがふわりと鼻の頭に落ちてきた。一瞬、ひやりとした感覚が伝わってきて、びくりと肩が揺れる。ブラッドが慌てて拭うと、それはもう水になっていた。


「どうかした?」


そんなブラッドの様子を見ていたコウタが、小さく笑ってブラッドに尋ねる。


「これ、」


ぱちぱちと目を瞬き、不思議そうな顔をしながら、ブラッドは空を見ていた目をコウタに移した。


「なんですか?」

「え…雪だよ? ほら、下にたくさん積もってるやつ」

「…これが、雪なんですか?」

「うん、見たことない?」

「はい、初めて見ました。名前だけは知っていたんですけど…」


ゆき、もう一度呟くと、ブラッドはまた空を見上げる。そんなブラッドを見たコウタは、何かを思いついたように、近場にある雪を手にとり、少しだけ丸めたものを力をこめずに放り投げる。


「それ」

「ひゃっ!」


雪玉は、ぺしゃり、とブラッドの腕にあたる。慌ててコウタを見ると、いつもの人懐こい笑みを浮かべていた。


「ちょっと遊ぼっか?」

「雪合戦、ですかっ…?」

「うん。やる?」

「はいっやりたいです!」

「よっし、じゃあいくよ!」


しばらく、雪玉が行き交う。初めは遠慮がちだったブラッドも、コウタの持ち前の取っつきやすさのせいか、徐々に遠慮なく雪玉を投げるようになっていた。


「わ!…えいっお返しですっ」


勢いよく投げた雪玉はコウタに当たることなく、2人の元に歩いてきていたジュリウスにあたった。


「あ」

「え、た、隊長…?ごめんなさいっ」

「いや、大丈夫だ」


慌てて頭を下げたブラッドの頭を優しく撫でてから、服に残った雪をはらう。そんなジュリウスの様子を眺めながら無線機を片手に話をしていたバーストは、どうやらミッションの報告を終えたようで、小首を傾げながらコウタに近づく。


「そちらも終わりましたか?」

「うん、バッチリ。ブラッドともだいぶ連携とれるようになったかな」

「それなら良かったです。先ほどは2人がしていたのは雪合戦ですか?」

「そうそう。ブラッドが初めて雪みたらしくってさ。ちょっと遊ぼっかって話してて。バーストの方は…って、それ雪兎?」

「ええ。ブラッドとコウタを探しているときにジュリウスと作ったものです」

「わあ、かわいい!どうやって作るんですか?」

「一緒に作るか?」

「はいっ」


ブラッドに作り方を教えるジュリウスの表情は普段あまり見られない珍しいものだった。
おそらく本人も無意識に違いないが、ジュリウスはブラッドの中でも、ロミオと特にブラッドに対しては特別柔らかい表情をする。…とはいえ、ジュリウスのこの微細な表情の変化にコウタとバーストが気づけたのは、2人がともに場の空気を読むのに長けているからだったわけで。


「…仲良きことは美しきって感じかな?」

「はい。そうですね」


ジュリウスとブラッドの様子を見ていたコウタは控えめにそばに立つバーストに笑ってみせると、小さく頷いたバーストもほんの少しだけ笑みをつくった。


「バーストって寒いの苦手じゃん?大丈夫?」

「はい、問題ないです」

「えー?でも手とか冷たいよ」

手に可愛らしい雪兎を乗せたバーストの手を包むようにコウタは手を重ねる。


「こうしてればちょっとはあったかい?」

「…うさぎが溶けないといいのですが…」


ほんのりと頬を染めたバーストとつられるように照れた表情をしたコウタ…そんな2人の様子を見て、ジュリウスとブラッドは顔を見合わせて笑い合ったのだった。





ゆきあそび





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