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「あ…」


珍しい場所で、思わぬ人を見つけて立ち止まる。
色とりどりのお花と、周りを水に囲われたお庭の奥にある木の下で、柔らかな小麦みたいな色の髪が揺れる。
きらきら、と。いつの日か手を伸ばしかけた髪はやっぱり綺麗だった。


「ジュリウス、先輩」


そういえば、メディカルチェック以外でジュリウス先輩と2人で話した記憶がない。
初めてあったときに「友達になりたい」と言った私のわがままを叶えるために、いつだってロミオ先輩が間にいてくれたから…。


「ジュリウス先輩」

「……、」


ふ、と目があった。ゆっくりと瞬きをしたジュリウス先輩の目はどこか遠くを見ていて、なんでかちょっとだけ泣きそうになった。


「…お前か」

「お疲れさまです。あの、隣りに座ってもいいですか?」

「…、ああ」

「えへへ、ありがとうございます」


木の下に座っているジュリウス先輩の横に腰掛ける。ジュリウス先輩は、私から視線を外してぼんやりとどこかを見ていた。何を話せばいいのか分からなくて、色々考えて、気になっていたことを聞いてみる。


「ジュリウス先輩の着ている服って、制服、なんですか?」

「…ああ、ブラッドの制服だ」

「ロミオ先輩は制服着てないですよね」

「あいつは何かと不真面目だからな。強制というわけでもないので放っておいている」

「そうなんですか」


ぷつり、と会話が途切れてしまう。何を言うわけでもなくて、ジュリウス先輩も私もただ黙っていた。


「…その服もロミオに買ってもらったのか」

「え、あ、はいっ!可愛いお洋服ですよね」


ジュリウス先輩から話してくれたことに驚きつつ、何度も頷く。前にロミオ先輩が服を買ってくれたとき、ジュリウス先輩にも見せに行って。特に何も言わなかったのに覚えててくれたんだ……。


「あいつは服のセンスがあるな。お前によく似合っている」

「あ、ありがとう…ございます…」


何かわからないけれど、どきどきして落ち着かない。普段のジュリウス先輩はあんまりしゃべらなくて、それなのに今日はどうしたのかな…。


「…前に、ここでロミオとお前と話をしただろう」

「はい…」

「あれから不思議とよくその時のことを思い出す」

「ジュリウス先輩…?」


ジュリウス先輩はやっぱりどこか遠くを見つめていて、いつか遠くへ行ってしまう気がして。


「あ、あの、呼んでください」

「…?」

「寂しいときとか、辛いときとか、あと、えっと、私とロミオ先輩のことを大切だって、家族だって思ったときとか」


…ブラッドって。名前を。


「呼んでください。そしたら、絶対にジュリウス先輩から離れません…!」

「っふ、なんだそれは」


ふわり、と。おかしそうに笑ったジュリウス先輩の顔は優しくて、心臓がぎゅうっとなって苦しい。


「…っ、約束ですからね」

「"家族"だからか?」

「か、家族だからです」


そうか、と、前と同じようにジュリウス先輩は木に寄りかかったままただ小さく呟いて、でも、ジュリウス先輩も少しずつ歩み寄ろうとしてくれている気がして。

それからロミオ先輩が庭園にくるまでは特に話もなかったけれど、温かくて優しくて。
…居心地の良い時間だった。





(…またゆっくりお話できるといいなあ…)





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