クリスマス準備





※長編番外編


「貴方達にお願いがあるのだけれど、よろしいですか?」


その日、ラケルからされたお願いにジュリウスとロミオ、ブラッドは顔を見合わせた後ゆっくりと頷いた。





「ロミオ、向こうを押さえててくれ」

「分かった!」

「ブラッドは下にオーナメントを頼む」

「はい!」


マグノリア=コンパスの一室に置かれたジュリウスの背丈ほどのモミの木を3人で彩っていく。


「にしてもさ、ラケル博士から直接お願いって何かと思ったらクリスマスツリーを用意してくれ、だもんな」

「私はラケル先生のお願いなら、出来ることはなんでもやりたいですよ?」

「俺もブラッドに同感だな」

「嫌ってわけじゃないけど!たださ、なんか意外だったなーと思っただけで!」


ロミオの言葉にブラッドは首を傾げる。


「あれ、ジュリウス先輩とロミオ先輩はマグノリア=コンパスの出身なんですよね?ツリーって毎年あったんじゃないんですか?」

「俺が居たのは数年前になるが確かその時にはなかったな」

「去年も特になかった気がしたけどなー。あ、飯は豪華だったかも?」

「そうなんですか?」

「それは今年から始めることですから」

「あ、ラケル先生」


穏やかな笑みを浮かべているラケルは3人に近づくとツリーを見上げる。


「父の部屋の整理をしていたらたまたま見つけたの。せっかくなら、マグノリア=コンパスを巣立ったジュリウスとロミオ、それに新しい家族のブラッド…貴方達にやってもらいたかったのです」

「このツリーはラケル先生のおうちのものなんですか?」

「ええ。昔はお姉様と私で飾り付けていたんですよ」


懐かしそうに目を細めるラケルを見て、ブラッドはにっこりと笑う。


「先生、任せて下さい!先輩達と可愛く飾ってみせます!」

「えーどうせならかっこよくしようぜ!」

「絶対かわいい方がいいですー!」

「…綺麗に飾れるよう努力しますので任せて下さい。…2人ともその辺にしておけ」

「す、すみません」

「わかったよ…」

「ふふふっ…それじゃあお願いしますね。ああ、そうだわ。クリスマスはみんなで夕食をとりましょうね」

「はいっ!」


ラケルが部屋をでた後、話しながら飾り付けを再開する。

ふわふわした綿にきらきらと輝くモール、リンゴやトナカイの形をしたオーナメント。
緑一色だったツリーがクリスマス色に染まっていく。


「最後はこれですね。お星さま!」


ブラッドが背伸びしながらツリーの頭につけようとするもののなかなか届かない。見かねたロミオがブラッドを抱き上げる。


「ひゃっ」

「ブラッドじゃちっさいから届かないだろ」

「わ、わっ大丈夫ですってば!」

「ちょ、暴れんなって!」

「おろしてくださいーっ」

「お前達は何をしているんだ」


ジュリウスは小さく笑った後、言い合いを続ける2人に近づく。


「ブラッド、じっとしていろ」

「え…せんぱ…きゃっ」


ロミオの腕から落ちそうになっていたブラッドを今度はジュリウスが抱き上げる。


「じゅ、ジュリウス先輩!?」

「このまま手を伸ばせば届くだろう」

「は、離さないで下さいね…?」

「大丈夫だ」


ジュリウスの肩に片手を置き、手を伸ばして星のオーナメントをつけ、クリスマスツリーが完成する。


「完成、だな」

「は、はい…あの、そろそろ…」

「ああ、悪い」


ゆっくりと地面に足がつくと、ブラッドはジュリウスにお礼を言ってツリーを見上げる。


「無事にミッション終了したな!」

「そうだな。2人ともお疲れ様」

「マグノリア=コンパスの子たちが喜んでくれるといいですね」

「きっと喜んでくれる。…よし、ラケル博士に報告しに行くぞ」

「はーい」


部屋を出て行く2人について行く途中、一度振り返ってツリーを見る。
きらきらと飾りの輝くツリーを見上げていると、わくわくとした気持ちになってくる。


「先輩たちとクリスマス、楽しみだなあ」

「おーい、ブラッドー?」

「はーい!」


軽い足取りで部屋を出る。
マグノリア=コンパスの子どもたちの歌うクリスマスの曲と鈴の音色を聞きながら、3人並んでラケルの部屋に向かっていった。





(ジュリウス先輩、ロミオ先輩!クリスマスは一緒にいましょうね)(当たり前だろー!)(勿論だが…あまり浮かれすぎないようにな)



2013 Merry Xmas…!



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