酔っ払いと青少年






※コウタとGEB♀主がお付き合いしています





「うっわ…酒くさ…」

「おっ!よう、コウタ」

「んあ?おー、コウタか。ちょうどよかったお前も話に付き合えー」


昼間から食堂で飲み明かしている上司達を見て、コウタはため息をつく。


「リンドウさんにハルさん…二人してなにしてんすか」

「呑んでる」

「見れば分かりますって…」


絡まれると面倒だと判断したコウタがさっさと食堂を去ろうとする前にハルオミに捕まり、結局話に付き合わされることになったのは、今から数刻前になる。


「…だから俺は思ったわけだ…やはり女性は胸が至高だと」

「あー…、なー」

「……部屋に戻りたい…」


酔った勢いなのか普段の倍の熱さでハルオミが自分のフェチについて語り、リンドウは適当に聞き流しながら酒を飲み比べている。


「…あー、そういやコウタに聞きたいことがあったんだがいいか?」

「えー…なんすか?」

「そこでブラッドの副隊長に言われたわけだ…胸とかどうだと…」


三回目の同じ話を始めたハルオミを無視して、リンドウがコウタに向き直る。


「お前、バーストと付き合ってるんだったよな?」

「そうですけど、それがどうかしたんすか?」

「あー、なんだ、あれだあれ」

「あれ?」

「責任問題とかそんなやつだ」

「…?」


あー、とかうー、とか唸りながらなにかを伝えようとしているリンドウに首を傾げながらムツミに出されたソフトドリンクを飲む。


「面白そうな話だな。俺も混ぜてくれよ」

「ハルさん…胸はもういいんすか」

「それは後だ、後。で、コウタがまだバーストを押し倒してないって話だったよな」

「ぶっ!!」


げほげほと咳き込む。とりあえずムツミが席を外していて良かったと思う。


「き、急になに言って…ごほっ…」

「お前らが付き合ってどんくらい経ったっけなあ?ま、今の子はすぐ次に進みたがるものだよな。俺も逸る気持ちはよーく分かる」


「いやいやいや、ちょ、ちょっと待ってくださいって…責任問題って、もしかしてそういう話ですか…」

「あー、まあ、そうだな。きちんとしておいてやらないと辛い思いするのはバーストだからなあ」

「バーストの子供か…絶対に可愛いな。俺が嫁に貰うっていうのはどうだ?」

「絶対反対に決まってるでしょ…ああ、てかまじでやめてください…絶対可愛いじゃないっすか」


おそらくリンドウは真面目に話をしているが、ハルオミはおもしろ半分に違いない。そんなおもしろ半分のせいでバーストとの将来を考えさせられるとは思いもしなかったけれど。


「…正直な話、お前もバーストも年頃な訳だし、そういう雰囲気になることもあるだろ?」

「…それは、」


正直な話……全くなかったりする。これっぽっちも。

付き合いだしてからというものコウタもバーストもお互いに話すだけで精一杯なところがあり、キスどころか手だってまともに握れないくらいで。


「やっぱり俺だって男だし、そういうことも考えますけど…」


初めて出会ったあの時に比べたらお互い随分と大人にはなったけれど、自分もバーストもやはりまだどこか子供で。

この距離がもどかしいとも思うし、心地良いとも思う。


「まあ、焦らなくてもいいかなあって。これからずっと一緒にいるんだし」

「…ああ、そうだな」

「おお、さりげない結婚宣言かあ?」


茶化してくるハルオミも父親のように安心した表情のリンドウも。
違いはあれど結局はどこかぎこちないコウタとバーストの仲を気にかけているらしく。


「あの、コウタ…いますか……?」

「え、バースト?どうしたの?」


遠慮気味に食堂の扉が開き、バーストが顔を出す。


「あっコウタ! …あの、その…」

「うん、待ってるからゆっくりでいいよ」

「は、はい。すみません。あの、これから…ミッション、がありまして…よければ一緒に行っていただけませんか…?」

「もちろん行くに決まってんじゃん! もうすぐに出る?」

「はい。用意が出来次第出撃します」

「そっか、分かった。てわけで俺もう行きますね。二人とも程ほどにして下さいよ」

「おー。行ってこい、行ってこい」


さっきまではなかなか帰してくれなかったのに、あっさりと解放される。
再び胸の話を始めたハルオミを見てリンドウに同情しつつ食堂をあとにした。





(何はともあれコウタもバーストも立派な大人になりそうで一安心だ)
(リンドウも俺も年取ったもんだよなあ)






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