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「えっ…面会謝絶…?」

「ええ」


いつも通りブラッドの病室にやってきたロミオは戸惑った表情を浮かべる。


「それってやっぱ昨日の訓練が…」

「それもあります。彼女には少し無理をさせてしまったみたいです」

「じゃあやっぱり、尚更…その、会いたいって言うか…」

「それは出来ません。今日はいつもジュリウスがやってくれているメディカルチェックより本格的な検査も行う予定ですので、また明日以降いらっしゃい」


ロミオはやはり納得いかないという表情だったが、相手が尊敬するラケルということもあり、仕方なしに、また来ます、と伝えて踵を返した。


「…先輩、行きましたか?」


ベッドの中に潜り込んでいたブラッドはそろそろと顔を出す。そんな様子を見て優しく微笑みながらラケルはブラッドの枕元に移動する。


「ええ。ブラッドのことを心配していましたよ」

「ラケル先生…わがまま言ってごめんなさい」

「誰だって、誰かに会いたくない日もありますよ。弱っているときは尚更です」

「はい…」


目を伏せたブラッドの頭をそっと撫でると、メディカルチェックを始める準備をする。


「体調はどうですか?」

「身体が熱いです。あと、頭がぼうっとして…風邪引いてるみたい…な感じなんですけど、腕輪してるとこが一番、熱くて…」

「症状が出たのは今朝起きたときですか?」

「昨日の夜も少し身体熱いなって思ってて…起きたらこんな感じで…」

「昨日の訓練の時、何か違和感がありましたか?」

「…いえ、何もないです」

「…ブラッド、嘘を言わなくていいですよ。フライアでは、私が貴女の母代わりですから」

「ラケル、先生…」


風邪を引いている時はどこか人肌が恋しいもので。でも、同時に弱っている姿を見られたくないのも本能らしい。
こんな時に一番頼れるのは、自分の身内…つまりは家族だという。


「今はご両親と会えなくて寂しいでしょうけれど、貴女は独りじゃないわ。私も、ジュリウスも、ロミオも…ブラッドが、貴女の家族です。いいですか?ブラッド」

「はい…」


少しだけ滲んだ涙をごしごしと拭う。


「さっきのお話ですけど、本当は…形態変化の時…腕輪が痛かったんです」

「そう…それは怖かったわね」

「…はい…神機を持ったときは大丈夫だったのに、なんででしょう…」

「すぐに原因を見つけましょうね。貴女が少しでも苦しまないように」


ふわりと、酷く優しくラケルは微笑む。
ブラッドもつられるように笑って頷く。


「今日は、もう少し詳しい検査をしていきます。とは言っても眠くなるでしょうから、そのまま眠ってしまっていいわ」

「はい」

「ゆっくりおやすみなさい、ブラッド」


ふわふわと頭にモヤがかかる。ゆっくりと瞼が落ちてくる。優しく、優しく…頭を撫でられる。


「貴女が因子とならないことを願って」

「?」


なにか、きこえたきがした、けれど。

優しく包み込んでくる眠気から逃れる術も知らず、意識を手放した。





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