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(※偏食因子やオラクル細胞の話がありますが、こちらの理解が間違っている場合ご指摘下さい…。)





「…まず、オラクル細胞とは」


お昼を過ぎた後の病室は、窓からさす日差しが暖かくて気持ちがいい。それに、フライアから三食きっちり出されるご飯はどれも想像以上に豪華でとってもおいしい。

そんな幸せなお昼ご飯を済ませているせいかベッドに腰掛けたロミオ先輩はこくりこくりと舟をこいでいた。


「自ら考えて喰らうことのできる存在だ。現段階地球上に生息しているアラガミは、このオラクル細胞から構成されていて……」


向かいのベッドに腰掛けて資料を見ていたジュリウス先輩は顔を上げ、ロミオ先輩を見る。私も隣りのロミオ先輩に目をやると、完全に目が閉じられていてそのまま私の左肩に寄りかかってくる。


「起きろ」

「いっで!」


ジュリウス先輩は立ち上がって分厚い本でロミオ先輩の頭を軽めに叩いた。思ったよりも強い振動が伝わってきて痛そうだなあ思う。


「お前は先輩なんだろう。少しは後輩を見習え」

「意味解んないんだから仕方ないだろ…! いってえ…」

「続けるぞ。オラクル細胞の特徴として、偏食があげられる。偏食とは、オラクル細胞が持つ特定の対象のみ捕食する特性のことで、俺達が投与されている偏食因子はそれを誘導するものだ」

「つまり…どういうこと?」

「合ってるか分からない、ですけど…。例えば、目の前に色んな食べ物がいっぱいあるとします。それで、どれを食べてもいいのに好きな物しか食べない。これが偏食じゃないでしょうか…?」

「まあ、その解釈でいい」

「あ、それなら何となく分かるな! つまり偏食因子は…えーと…」

「どれを食べるか決めて食べさせるもの…?」

「そういうことだな。偏食因子は定期的に腕輪から摂取される仕組みになっている。そうしないと自分の神機のオラクル細胞の制御が効かなくなり、神機に喰われて終わりだ」

「えーと…つまり、俺らゴッドイーターが使ってる神機はアラガミと同じオラクル細胞でできてて、普段はこの腕輪から偏食因子を通してアラガミを喰えって命令して戦ってるけど…腕輪が無くなったりしたら神機が言うこと聞かなくなって喰われるってこと?」

「かなり簡単に言うとそうなるな」


ふむふむと頷く。
ジュリウス先輩によって行われる座学は難しいけれど、ジュリウス先輩とロミオ先輩、2人と過ごす時間はすごく楽しい。


「腕輪から時々チクッとするやつ偏食因子を注射してんだよな…あーなんかぞわぞわする…」

「アラガミと戦い怪我を負ったときよりマシだろう。また、万が一にも適合した神機以外の神機に触れた場合も先程と同じ結果になるから覚えておけ」

「はーい」

「分かりました!」

「以上がオラクル細胞についてだ。これを踏まえて明日は神機について詳しくやっていこうと思う」


ベッドに散らばっていた紙を集めてまとめ上げたものを持ってジュリウス先輩は立ち上がる。


「明日もやんの? 俺、勉強って嫌いだな…」

「こちらも忙しい中、お前達のために座学の時間を取ってやっているんだ。少しは真面目にやれ」

「ごめんなさい…ジュリウス先輩」

「お前は真面目にやっているからいい。あと、できる限りターミナルのデータベースを見て自分でも勉強しておいて欲しい」

「はいっ!」

「ロミオ、お前もだ」

「はいはい。それよりさ、ブラッド、フライアに新しい場所が出来んの知ってる?」


ジュリウス先輩のお咎めをいつも通り流しつつ、ロミオ先輩は雑談を始める。


「新しい、場所?」

「そ!その名も庭園!」

「ていえん?それってどんなの何ですか?」

「それは〜、あれだ!…えーと、ジュリウスが教えてくれる!」

「……植物を鑑賞するための場といったところか。今はほとんど見られなくなったが、アラガミが出現する前にはそこら中に咲いていた花を中心に造られると聞いている」


ジュリウス先輩は無言でロミオ先輩を見てため息をつきながら説明してくれた。


「無くなっちゃったのに造れるんですか?」

「ラケル博士とレア博士の研究の結果、実現することができるようだな」

「私、お花って菜の花しか見たこと無いですけど、もっといっぱいあるんでしょうか?」

「おそらくな」

「わあ…!楽しみですね!」

「だろー!出来たらすぐに見に行こうな!」

「はいっ!ジュリウス先輩も一緒に行きましょうね!」

「いや、俺は遠慮しておく」


さほど興味も無さそうなジュリウスの袖を掴み、ブラッドは無邪気に笑顔を向ける。


「みんなで行きたいです」

「悪いがロミオと2人で行…」

「あーもーっ!ジュリウスもたまにはのってこいって!ジュリウスと俺とブラッドの3人で行くで決定だかんな!」

「おい、ロミオ」

「たまには息抜きしようぜ!な?」

「…勝手にしろ」


ジュリウス先輩は諦めたようにため息をついて病室を出て行ってしまった。無理やりすぎちゃった、かなあ。


「ジュリウス先輩怒ったかな…」

「んー、ブラッドに上目づかいで頼まれて満更でもなかったんじゃない?」

「もー何ですかそれ」


ジュリウス先輩とお友達になるにはまだまだ遠いけれど、少しずつ前進している気がして、ただわくわくしていた。

…毎日、当たり前に明日を楽しみにしていた。





「ジュリウス、ちょっといいですか」

「ラケル博士?」

「座学、お疲れ様でした。そろそろブラッドに神機を扱わせてみたいのだけれど」





(今日の座学は中止だ。その代わりにラケル博士に協力して頂いて神機を扱う訓練をしようと思う)





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