最初の命令





…何が起こったのか分からない。


どうしてサクヤさんは泣いているんですか。
どうしてアリサは座り込んでいるんですか。
どうして、リンドウさんは…見あたらないんですか。


「ユウ!バースト!そっちにいるか!?」

「は、はい…!リンドウさんっどうしたらっ…」


お兄ちゃんの焦った声。いつの間にかアラガミが集まってきていて、ソーマさんとコウタが必死に戦っていた。


「全員撤退しろ!」

「わかりまっ…!」


座り込んだままのアリサにアラガミが飛びかかる。


「アリサ危ないっ!」


お兄ちゃんが神機を振るい、アラガミを吹き飛ばす。もう一方のアラガミを装甲で受け止めた。


「りんどう、さ…」

「バースト!お前が指揮をとれ!」

「なっ…」

「お前は普段から周りをよく見ているから大丈夫だ!今はお前が頼りなんだ…ユウとお前に第一部隊は任せる」


それは。なんですか。
まるで。だって。それって。


「頼む…っ…バースト…!!」

「っ了解、しましたっ…」


周りの状況を確認する。皆を生きて帰らせる方法を。


「コウタ!サクヤさんのフォローを頼みます。ユウはアリサを。ソーマさんと私で退路を開きます」

「…バースト、いいか、皆を死なせるな!これは命令だ!」

「っ…はいっ!」


目の前が霞む。歪む。


「…っ撤退します!ソーマさん先行お願いします!」

「っ…ああ」

「コウタ、ユウ、ソーマさんに続いてください!」

「わ、わかった!サクヤさん行こうっ」


ソーマさんが切りかかる。コウタがサクヤさんの腕を引きながら、アラガミを牽制する。お兄ちゃんがアリサを背負って走り出す。


「バースト、悪いな…辛いよな」

「いっいえっ……」


ぼろぼろと流れる涙をすぐに拭う。今は泣いている場合じゃないんです。


「あいつらを、頼むな」

「しばらく!…任されます…っ」

「バースト!行こう!」


お兄ちゃんの呼ぶ声。神機を握り直す。


「しばらく、か…。そうだな」


瓦礫の向こうからリンドウが小さく笑った声がした。


「おっし、じゃあ、お互い始めるか」

「っはい…」

「またあとでな」

「了解しました!」


走る。リンドウさんから離れる。
アナグラからの迎えが待つ先に、最初と1人欠けた人数で辿り着いた。





(リンドウさん、約束ですよ)
(早く…早く帰ってきて下さい)




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