もう少しの未来の話
※♀主はほぼ名前だけ
「バーストが好きになったの、」
受付横の階段を登った出撃ゲート近く。前にバーストと昔は当たり前に平和な世界だったなんて話した場所に、今はアリサと2人。
「コウタだったら良かったのに」
ぼんやりとアナグラの中を見つめながらぽつりぽつりと話をする。
「そうしたら、みんな幸せじゃないですか」
「そうかなあ」
くるり、と向きを変えて肘を柵について天井を見つめる。
「確かにそれだったら俺は幸せだよな」
あまりしゃべらないけれど、ころころと表情を変える可愛らしい姿が頭に浮かぶ。
「でもさあ、俺がリンドウさんに勝てることなんてないんだよなあ」
「なんですか、その弱気」
むっとしたアリサの声に苦笑いして話を続ける。
「あいつが入ったばっかの頃、俺は同期だったし多分一番近くにいたのに、あいつの悩みとか全然気付かなくってさ。なのに、リンドウさんはすぐ気付いた」
「……」
「リンドウさんって、なんだかんだやっぱり大人じゃん?あいつが何も言わなくてもいつも気付いて、前を向かせられてた」
"よお、新人2人、元気にしてるか?"
"あっリンドウさんじゃん"
"お前は元気だなあ。若いって羨ましいねえ。…お?お前は寝不足か?"
"え!そうなのバースト!?"
"ま、悩みなんてごまんとあるだろうさ。どうしても辛くなったら俺でも誰でもいいから言えよー?"
"は、はいっ…あの、リンドウさん…ありがとうございます"
ふにゃりと、嬉しそうに笑った顔。今だって思い出せる。
「……」
「ま、諦めるつもりはないんだけどな!」
コウタはアリサに向かって明るく笑って、またアナグラを見回す。
「あれっバーストとソーマじゃん」
コウタにつられるようにアナグラの中を見まわすといつの間にか受付には2人が居た。2人でミッションにいくのかなあ、と思いながらアリサはぼんやりと2人を見つめる。
「…なあアリサ。急なんだけど一緒にミッション行かない?」
「今ですか?構いませんけど…。どんな内容ですか?」
「分かんない」
「はあ?」
よおし、なんて気合いを入れ直してコウタは階段を降りていく。
「よっ、バースト!これからミッション?俺とアリサもついていっていい?」
「あっ…コウタ!ちょうど良かったです。実は、このミッションなんですが、4人推奨だったもので…困っていたんです」
「おっマジで!うっし、背中は任せてよ!」
「頼りにしていますね」
…バーストが困っていたなんて、全く気がつかなかった。コウタとバーストのやりとりを見ながら、アリサは微笑んだ。
「悔しいですけど、今、バーストのことに一番気付くのはコウタじゃないですか」
「おーい、アリサ!ミッション決まったぜー」
「今行きまーす!」
いつか、コウタとバーストが手を取り合って歩く未来を想像しながら、アリサは軽やかに階段を降りていった。
(おい、コウタ)
(何だよ?ソーマが話しかけてくるとか珍しいじゃん)
(…まあ頑張れよ)
(うわっ何だよ、頭撫でるなって!)
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