レンとの出会い
※捏造あり
僕が持ち主を失ってからどれくらい経っただろう。
誰も死んで欲しくない。
溢れ出そうなそんな強い思いが集まって、いつの間にかぼんやりと意識ができ…つまり、それが僕だった。意識というものができてから、僕は世界を知った。ゴッドイーターと呼ばれる存在の神機として、様々なものを見てきた。
でも。
今の僕が見るのは代わり映えしない見慣れた場所のみ。以前は、メンテナンスの時だけ居た場所。ずっとここの場所にいるだけ。
と、急になりだした警報。暫くして、メンテナンス室の扉が開き、懐かしい顔が見えた。
「あれ?どうしたの!早く避難しよう?言っておくけど、まだ君の神機は直ってないよ」
「っ!」
ああ、あの子は。確か、リンドウに懐いていた新型の女の子だ。
…名前をなんと言ったか。
きょろきょろと並ぶ神機を見回した彼女は、最後に僕…リンドウの神機を見た。
「ちょっ…と、待って!何するつもり!?」
「っ」
こちらに駆け寄って来た彼女は、リンドウの神機を見つめ…。
「なにしてるの!触ったら駄目!!そんなことしたら君はっ」
バアンッ!
轟音を立てて壁が破られる。小型のアラガミが勢いよく飛び出してきた。リッカさんの小さな身体は壁に叩きつけられ、気を失ってしまう。
それを見た彼女は…躊躇うことなく、神機を、手に、取った。
何…してるの、駄目だよ。そんなことをしたら、君は……神機に食べられる。
「ああああああっ」
聞いたこともない彼女の叫び声。初めてアラガミと対峙したときだって、ミッションで大きめの怪我をしたときだって、リンドウと離されたあの時だって、決して…声をあげることなんてなかったのに。
ガッ!
彼女の振った神機が、オウガテイルを吹き飛ばす。
「う、あああっ」
神機が、勢いよく彼女を捕食する。途端に僕に流れてくる彼女の記憶。
兄と同じ新型に選ばれた安心感、不安感。死と隣り合わせの恐怖の中に現れた…優しく頭を撫でる、リンドウ。
彼女は、ずっと、ずっと、リンドウを想ってきた…?
「ね…がいっ」
腕輪に触れながら、ふらふらと彼女は立ち上がろうとする。
「おねっ…がい…」
「力を、かして…!!」
「リンドウ、…さんっ…!」
っ!あなた、は…!リンドウ、を…。
オウガテイルが、立ち上がる。
駄目だ、今の彼女はもう戦えない。誰か、誰か、誰か。彼女を……。
「かな、らず…っ!リンドウさんは、見つけるから…だからっ!
わたしにっ力を貸してっ」
たすけたい。
そう、思った。
ヒュンッ!
空気を切る音。オウガテイルが怯む。彼女が振り返る。
「立ってください!」
「!」
「とどめをっ!」
彼女は、もたつく身体を起こし、ありったけの力で神機を振った。
オウガテイルは、動かなくなり、消えた。
ふっと意識を失った彼女を抱きとめる。今なお捕食を続ける神機は、腕輪を壊そうとしていた。
「駄目だよ…」
腕輪に触れる。彼女から流れてくる、甘酸っぱい想いが心地いい。
「この子を喰べては、駄目」
神機が捕食をやめる。いい子だね、と彼女の腕輪を撫でた。
「僕がきっとリンドウを助けるから。今度はあなたの力を貸してください」
僕の、神機を見つめる。
彼女と同じショートブレード。
「さっきはごめんなさい。あなたの名前、思い出しました」
ゆっくりと彼女を床に寝かせる。
「バースト、一緒にリンドウを助けましょう」
忙しい足音が近づいてきて、メンテナンス室の扉が開かれた。
(ねえ、リンドウ。新人だったバーストはこんなに立派になっちゃったよ)
(早く、リンドウに会わせたいな)
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