俺なら泣かせないしないのに、なんて言えないけど



※ついったーの診断メーカー様よりお題拝借



初恋は叶わないっていうじゃん?

俺って結構ほれっぽいというか、初恋ってどれだって感じなんだけど、そんな俺とは違って、バーストは初恋を大切に、本当に大切にしてた。

おんなじ時期に第一部隊になって、一目惚れなんかしちゃった俺が奇しくも彼女と親友となったのは、単にあんたがリンドウさんを好きだったから。恋の相談とか何でもいいからバーストの一番の理解者になりたいって、そう、思ったから。
でも、そんな彼女の初恋もとうとう終わりらしい。



「サクヤさんとっても綺麗です!」

「ありがとう、アリサ」


真っ白なドレスに身を包んだサクヤさんはアリサのいうとおり本当に綺麗だったけど、それに同意することができない。
ちらりと横に立つバーストを見ると、少しだけ俯いていて表情は分からなかった。


「サクヤ、そろそろ時間だぞ」

「うん。それじゃあみんな…またあとでね」

「…バースト、あれ…渡さないの?」

「……」

「バースト…」


俺とアリサは顔を見合わせる。
数日前、バーストから相談を受けた俺とアリサと、サカキ博士にも協力して貰って用意したプレゼント。
今日がバーストにとってどんな日かくらい分かっているから…無理強いなんて出来ない。
部屋を去るリンドウさんとサクヤさん。渡されることなかったプレゼントは、またひとつバーストの重りになっちゃうのかなあ。


「…行きましょうか。式が始まります」

「…うん。そうだね」


優しく響いたアリサの声に同意して、バーストを促す。


「っ、サクヤさんっ」


小さく頭を横にふったバーストは、部屋を飛び出して行って、俺とアリサも慌てて後を追う。


「サクヤさんっ…これを…」

「これは…」

「前にリンドウさんから伺ったんです。サクヤさんが好きな花だって…。
私一人では絶対に用意できなかったけれど、みんなが協力してくれたんです」


にこり、と。不器用に笑ったバーストは、白い花束をサクヤさんに渡した。


「…お二人とも、ご結婚おめでとうございます。どうか、お幸せになって下さい」

「バースト…」

「…バースト、ありがとうな」


そっと涙をぬぐったサクヤさんの肩を抱き、もう片方の手でぽんぽんとリンドウさんがバーストの頭を撫でる。


「お前は芯が強いし、器量もいい。それにずっと前から気付いている奴が絶対にいる。俺なんかより、そいつの方がバーストを幸せにしてやれる」


ちらりとリンドウさんがこっちを見た。リンドウさんに直接俺はバーストが好きだって言ったことはないけど、やっぱり気付いていたみたい。
いつだってリンドウさんは見てないようでしっかり見てて。それが悔しくって…憧れて。



「バースト、この花、一本受け取ってほしいの」

「私…ですか?」

「ええ。昔は結婚式で花嫁が投げたブーケを受け取った人が次は結婚出来ると言われていたみたいなの。でも、こんなに素敵なもの、手放せないもの」


ぎゅっと花束を抱き締め、サクヤさんは本当に幸せそうに笑う。


「だから、バーストに一本受け取ってほしい」

「…サクヤさん…ありがとうございます」

「うん。本当にありがとう、バースト」


サクヤさんは、花の一本をバーストに渡すと、リンドウさんの差し出した手に手を重ねて二人で歩いていく。


「よかったですね!」

「うん。よかっ…」


ぼろぼろと。バーストの目から涙がこぼれ落ちていることに気が付く。ごしごしと必死に拭う姿がひどく悲しくて、なのにきれいで。


「バースト…大丈夫です…。きっと次は貴女が幸せになる番です…!」

「うん…俺もそう思う。バーストいっぱい頑張ったじゃん!」

「…っわた、しは、いいんですっ…ただ、あ、りさも、こうた、も…そーまも、ユウ…おにい、ちゃんも…みんなが幸せになれればっ…もう、いいんです」

「貴女って人は…どうしていつも人ばっかりっ……もっと……もっと、自分の幸せを望んだっていいんです…」

バーストを抱き締めながら泣き始めたアリサ。バーストの肩に腕を回す俺。声を漏らさず、ただただ涙を流すバースト。

ねえ、初恋は確かに叶わなかったかもだけど、次にする恋はきっと。
俺もアリサも、全力で応援するから。
…できれば、その相手が俺だったらなって、思うけど。


「行こう、バースト」

「…っ」


こくりと頷いたバーストの手を引いて歩く。豆だらけの小さな手はひどく暖かくて心地がよかった。




(俺なら絶対に泣かせないなんて言えないけどさ)
(まずはやってみなきゃ分かんないじゃん?)


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