ひみつの、約束。
「ソーマさん、今、大丈夫ですか」
「…なんだ」
「次のシオの食事についてなのですが…」
「そーまはそーまじゃないのかー?」
ラボラトリの机に向かい合い話を始めたバーストとソーマの間にひょこりとシオが現れ、そんなことを口にした。
「? ソーマさんはソーマさんですよ、シオ」
こてり、と今までとは反対にシオは首を傾げる。
「そーまさん?」
「…ソーマだ」
「そーま?」
「ソーマさんです」
2人を交互に見ながらシオは不思議そうな顔をしている。
「シオちゃん急にどうしたんでしょう?」
「ソーマの名前がなんか気になるのかな?」
未だに2人を交互に見ながらソーマの名前を連呼するシオを見ていると、同じく3人の様子を見ていたユウが、もしかして、と手をたたいた。
「バーストってソーマをさん付けでよんでるからシオがソーマの名前か混乱してるんじゃない?」
「あ、確かに!」
「なるほど…そうかもですね」
「……」
「……」
ソーマとバーストはお互いを見る。シオが来てからよく一緒にはいるものの、2人で居ることは今までなかった。お互いに感じていた微妙な距離。どちらも自分から踏み出すことが苦手な結果なわけで。
「…ソーマでいい」
「!…」
「いいな?」
「は、はい…」
「そーまはそーまさんなのかー?」
こてりこてりと首を左右に傾げるシオの頭を撫でて、ぎこちなさの残る微笑みを浮かべる。
「…ソーマ、ですよ。シオ」
「やっぱりそーまはそーまなんだな!」
「はい。ソーマはソーマです」
頭を撫でられ、くすぐったそうな顔をしていたシオは立ち上がり、ソファーに座っているバーストの膝の上に座った。自然とバーストとシオは向かい合わせの形になる。
「シオ、バーストのことすきだよ」
そのままバーストの首に腕を回し、シオが抱きついてくる。一瞬目を見開いたバーストも、照れたように小さく笑い、シオの背に腕を回す。
「みんなのこと、すきだな…」
「私もです」
お互いにしか聞こえないほどの声で、内緒話をする。
「バーストもか?」
「はい。私も第一部隊…みんなのことが、とても好きです」
「そっか…おそろいだな!」
「なになに?何の話?」
「シオと私だけの秘密です」
「ひみつだー!」
不服そうなコウタを尻目に、ぎゅうっとさらに力を込めて抱きついてくるシオを抱きしめながら頭を撫でる。
「…しあわせ、だー」
「?」
「バースト、いま、しあわせなんだな」
とくりとくりとする心音は、自分のものか、はたまたシオのものかは分からない、けれど。
温かさとは違った言い表せない体温。
図らずも自分の感情に共鳴し、そばについていてくれるシオにひどく安心する。
…おそらく、それは。
「ソーマも、同じなのかもしれませんね」
「そーまも?」
身体を離し、シオは首を傾げる。
「そっか。これ、そーまもしあわせなんだな」
にこりと笑ったシオは、膝から降りると、バーストの手を引きソーマのそばに寄る。
「そーま」
「あ?」
「おすそわけだぞ!」
ぎゅう、と今度はソーマに抱きつく。
「っ、何すんだ」
「しあわせかー?」
「ああ?」
「? たりないのか?バースト、バーストもそーまにおすそわけ、だな!」
「わ、私もですか…?」
「ちょっ!待っむぐ…!」
「コウタは黙っていて下さい」
助けを求めようとコウタやアリサの方を見るも、どうやらアリサに止める気は無さそうで、ユウもいつもどおりにこにことしている。
「バースト…?だめ、かー?」
シオにねだられると、う、と息が詰まり、自分の悪いところだとも思うものの、つい流されてしまう。
「し、つれい、します…」
おずおずと服の裾を掴むと、シオは不満だったらしく半ば強引に腕を引かれる。
「きゃっ」
咄嗟のことに反応しきれず、ソファーに座っているソーマに覆い被さる形になってしまう。
「す、すみませ…」
深くフードを被り直したソーマが怒っているように感じて謝罪するも、ソーマは何も言わない。
「そーま、まっかだー」
「え…?」
「だまれ」
「きゃー」
じゃれつくシオと離れろと言いつつ引き離しはしないソーマを見て笑みがこぼれる。
「あの3人本当に仲がいいですよね…なんだか親子みたい」
「ソーマかあ…ちょっと無愛想だけど、何だかんだ世話焼きだし、いいかもね」
「よくないっ!全っ然よくないっ!」
「うるさいですよ、コウタ」
…第一部隊は、自分には賑やか過ぎると思う。
でも、それが楽しくて、なにより愛おしくて。
シオと目が合う。
人差し指を唇の前にたて、ひみつですよ、と呟く。シオは目を輝かせながら同じ仕草をして、大きく頷いた。
(だから、誰も死なせない)
(みんなの帰る場所である第一部隊を…いつまでも、護っていたいのです)
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GE2のコウタさんのキャラエピソードであった、いつまでも守っていたいんだ、のくだりがだいすきです
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