どうやら噂の新型ちゃんは
ふむ、とタツミは頷いた。
数分前には動き回っていた数匹のオウガテイルの亡骸と、その中心に立つ新型と呼ばれる神機を扱う少女。
「さすが新型ってとこだな」
「いえ、そんな…」
軽口のつもりだったのに、どうやら彼女は真に受けてしまったらしい。どこか泣き出しそうな瞳がぐっと細まり、額にしわが寄っている。
「冗談だって。旧型とか、新型とか言ってもよ、同じゴッドイーターってことに変わりはない!ってお前もそう思うだろ?」
「…そう、だといいです」
顔を伏せたまま目も合うことなく、少女は呟く。少女の同期のコウタから話は聞いていたが、どうやら本当に極度の人見知りらしい。
タツミは苦笑して、どうしたものかと考える。タツミの世話焼きな性格上、彼女のような子を見ると、つい放っておけなくなってしまう。
今までに少女と同じような性格の後輩が、1人、また1人とつぶれていくのを見てきた。珍しいことでは、ないのだが。放っておけないというか、なんというか。おそらくコウタが目を輝かせながら少女の話をしていたのが、ひどく印象的だったからだろうと思う。
「ちょっと、歩こうぜ」
「…?」
ぽんぽん、と少女の頭を撫でて歩き出すと、しばらく戸惑った後、小走りで追いかけてきた。眺めの良い場所まで移動し、瓦礫に適当に腰掛ける。立ち尽くしている少女に、隣りの場所を手でたたいて示すと、1人分ほどあけ、ゆっくりと横に座る。
「お、大森さん、あの…」
「へ?」
「え…?あ、間違っ…す、すみませっ」
「いやいやっ、間違ってないって。苗字なんかよく覚えてたなあと思ってさ。ほら、みんな俺のことは名前で呼ぶからよ」
「大森、タツミさん、で合っていますか…?」
「おう。お前は神薙バーストだよな」
はい、と小さく返事をしたバーストに、改めてよろしくな、と手を差し出すと、しぱしぱと目を瞬いた後、躊躇いながら手が重ねられる。
まだゴッドイーターになってから日が浅いせいか、女の子らしい小さくて柔らかい手に少しだけどきりとした。
「俺のことはタツミでいいぜ?苗字ってなんかむず痒いからさ」
「タツミ、さん…」
「ん、それでよろしくな」
わしゃわしゃと頭を撫でる。バーストはされるがままといった感じで、そういえば、バーストには兄が居た。つまり、こういったスキンシップには慣れているのだと思う。
「第一部隊は前線で戦うことが多いけどよ、リンドウさんとか、サクヤさんとか優しくて頼りになる先輩も多いだろ?」
「はい…皆さんにはとても良くして頂いています」
「部隊が違うとはいえ、同じゴッドイーターで、ましてはショート使いなんだからよ、何かあったら相談してきていいぜ」
「、はい」
「っと、あ、ヒバリちゃん?おう、終わったぜー。うん、うん…10分くらい? 了解。バーストも一緒にいるからさ、素材回収して待ってるよ」
無線機を切ると同時に素材回収という言葉が聞こえたのか、バーストは立ち上がる。
「じゃ、素材回収行くか」
「はい」
よっこらしょ、と立ち上がってどこから回ろうかと考えていると、…あの、と控えめに呼ばれて振り返る。
「…ありがとう、ございます。大森さ」
「なーまーえ」
「た、タツミさん、その、ありがとう…です」
「おう」
タツミは、にっと笑ってからもう一度バーストの頭を撫でて歩き出す。
控えめについてくるバーストを見て、こんな妹がいたら可愛らしいなあと感じながら。
何はともあれ。
新型ちゃんは、どこか放っておけない礼儀正しい女の子のようだった。
どうやら噂の新型ちゃんは
(コウタじゃないけど、目が離せないというか)
(なんというか)
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