ear kiss
※ジュリウスとGEB♀主がお付き合いしています
「んっ」
「気がついたか?」
ゆっくりと閉じられていた目が開き、ぱちぱちと数回まばたきしたかと思えば、勢いよく起き上がる。
「まだ寝ていた方がいい。お前、頭を打ったんだぞ」
「そんなことよりコウタは…!? コウタは無事ですか?」
「…ああ。コウタ隊長は大丈夫だ。大きな怪我もない」
「よかっ…た…」
ジュリウスは少し眉を寄せながら珍しく取り乱しているおんなのこを宥めると、パイプ椅子から立ち上がりゆっくりとおんなのこの両肩を押す。
「いいから横になれ。たまには休んだ方がいい」
「いえ…大丈夫です。あの、コウタはどこにいるんでしょうか?」
「人の心配ばかりしているが、自分がどうなったか分かっているか?」
ジュリウスに言われて先ほどのミッションを思い出す。
確か、コウタとエリナとエミールと四人でつがいのヴァジュラを討伐に行った。
予想外の感応種の無線、現れたガルムを迎撃して…。
「感応種の影響で制御できない神機でコウタ隊長を庇い、受け身に失敗して頭を打って気を失っていたんだ。思い出したか」
「…そう、でしたか。エミールとエリナに無理をさせてしまいました…」
「……」
「ジュリウス隊長もすみません。私も部隊へ戻りますのでブラッドにもど……っ」
優しく肩に置かれていた手で、どさり、と無理やりベッドに押し戻される。
「いっ…!」
「痛むなら休め。部隊が違うとはいえ上司からの命令だ」
「私は大丈夫です。この後はアリサとミッションが…」
「それはうちの副隊長が対応している」
「そんな…ブラッドの方の手をお借りしているなら尚更…それに、やはりコウタの様子も気になりますし…」
「……」
彼女とコウタは同期で、すでに付き合いは三年になるという。
彼女にとっては、極東支部の数少ない昔からの知り合いであることも、それを引いても彼女が仲間をいかに大切にしているかは理解しているつもりだ。
ジュリウスも同じようにブラッドを大切に思っているため考えには共感できるし、そこも彼女を好きになったひとつだった。
それでも。
やはり面白くないもので。
「おんなのこ」
「!」
名前を呼ばれ、ぴたりと口を閉じたおんなのこはみるみる赤くなっていく。
「わ、分かりました…ちゃんと横になっていますからジュリウス隊長は戻って下さい」
「…嫌だと言ったら?」
「な…」
未だに肩にはジュリウスの重みが掛かったままで、頬にジュリウスの髪がかすれるくらいに顔が近くて直視できない。
「…困ります」
「困らせているんだ。いつもおんなのこに困らせられている分を返そうかと思ってな」
「ひっ…」
名前を呼んだだけで真っ赤に染まっている耳に口づける。
所属が違うだけでなく、おんなのこは極東支部を空けることが多いため、なかなか会えない日は多く。
「じゅり、隊長っ…やめ…」
「ん…」
「やっ…!」
くすぐったいのか身をよじるおんなのこの両頬に手を添えてこちらを向かせる。
「!!」
「真っ赤だな。手があつい」
「…っ」
「何か言ってくれ。おんなのこの声、好きなんだ」
「は、離して下さい」
「ああ。キスしたらな」
「え…やっ、や、だめっ…無理です…」
必死に顔を逸らそうとする様子に思わず吹きだす。いつまで経っても彼女はこんな感じだ。
「す、すみません、許して下さい…。しっかり休みますから…」
「もう無茶しないか?」
「…なるべく、気をつけます…っ」
「それを聞くのは六回目だな」
「すみません…今度こそは…っ」
「ああ。期待しないでおく」
あとひとつ、と呟いて頬を撫でると、ちらりとこちらを伺う目と目があってすぐに逸らされる。
「嫌いだ」
「え…」
見開かれた泣き出しそうな目。こちらをむいた瞬間に距離を詰める。
「んっ…!」
「コウタ隊長のことばかり呼ぶおんなのこはな」
「なっ…んんっ…!」
「っ」
「ふっ…あ…っ」
「おんなのこ、愛してい」
「っあ…ジュリウ…」
「おんなのこ!大丈……」
勢いよく病室の扉が開く。息を切らせたコウタと目が合い、お互いに固まる。
「う、うわあああああご、ごごめんっ……ま、またな!!」
今度は勢いよく閉められる扉。しばらくの沈黙後、ジュリウスは苦笑する。
「見られた、な」
「!!!」
声にならない叫びを上げ、おんなのこはベッドの中に潜り込む。
これはしばらく口を聞いてくれないな、と困ったように笑うジュリウスの表情は柔らかく、誰が見ても幸せそうだった。
(そろそろベッドから出てきてくれないか)
(ジュリウスひどいです…コウタにあわせる顔がないじゃないですか…)
(わざとじゃなかったんだ。仕方がないだろう。それと普段から呼び捨てにしないか)
(皆さんに茶化されるので嫌です…)
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初めましてー!
企画にご参加頂き、ありがとうございます(^^)
ある意味遠距離なブラッドの隊長ジュリウスさんとクレイドル所属の主人公ちゃんのお話です。
何度注意しても無茶をやらかす主人公ちゃんに冷や冷やしつつ、そんな所も好きなジュリウスさんならおいしいなあ、と…。
コウタさんは主人公ちゃんが恥ずかしがると触れるのをやめますが、ジュリウスさんは構わず続けるイメージです…。
このお話を書いていて何かに目覚めました…この2人の組み合わせは今後増えるかもしれません(´`*)
今回は企画にご参加頂き、本当にありがとうございました!
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