友達≧恋人




「えっ、先輩…まだなの!?」

「わっナナ、ばか!声でかいっつーの!」


ナナの口をあわててふさぐと、むぐ、とくぐもった声がして、抗議するようにぱしぱしとふさいだ手を叩かれた。


「ぷはあ、だって…先輩、おんなのこと付き合いだしてからもう1ヶ月以上経つんだよ? 余計なお世話かもだけど先輩達っていつまで経っても友達みたいだし」

「う…」

「先輩、へたれすぎだよ…ちゅーも出来ないの?」

「う、うるさいな…! へたれで悪かったな…」


そんなの、わかってるし。口ごもりながら、カップに入ったコーヒーを飲む。


「おんなのこは女の子なんだよ? 好きな人とキスとか憧れると思うなー」

「嫌がられたら、どうすんの」

「その時はぁ……まあ、大丈夫だって!」

「人事だと思って…」

「…あ、いたいた!ロミオせんぱーい!ナナー!」


ぱたぱたと軽い足音に目を向けると、走り寄ってくるおんなのこと、転ぶなよ、と声をかけるジュリウスの姿があった。


「これからジュリウス隊長とミッションに行くんですけど、一緒に行きませんか?」

「行くー!先輩も勿論行くでしょ?」

「分かったよ…」


悶々とした気持ちで彼女…おんなのこを見る。俺の気持ちを知ってか知らずか…多分いや絶対知らないだろうけど、あどけない顔で笑う姿をぼんやりと眺める。


「あ、そうだ、先輩」

「?」


ナナがこっそりと耳打ちしてきて、その内容に眉を寄せる。


「協力するから…頑張ってね!」

「ちょ、待ってよ、ナナ……」

「さあさあ行こ〜!」


不思議そうなジュリウスとおんなのこの背を押していくナナは止められそうになかった。




『ミッション終わったらおんなのこと2人きりにしてあげる。協力するから…頑張ってね!』

ナナの宣言通りに、おんなのこと2人きりで素材回収にまわる。相変わらずおんなのこは俺の気持ちはつゆ知らず、楽しそうに笑いながら話しかけてくる姿に溜め息をぐっとこらえる。


「でね、この間、コウタさんとコウタさんの彼女さんとミッションに行ってね…先輩?聞いてます?」

「う、うん」


ひょこりと俺をのぞき込んでくるおんなのこは少し心配そうにまた話を再開する。

コウタさんと彼女さんは、何というか理想的なお付き合いだと思う。
お互いに考え方とか大人で、よく気がついて。ただ好きあってるだけでなくて、難しい言い方すると、恋人同士なのに切磋琢磨しあってるというか。

だから、たまにコウタさんにはおんなのことの話とか聞いてもらってたりする。ブラッドのメンバーにそーいう話をすると惚気だって嫌がられるけど、同じく彼女がいるコウタさんは快く話に付き合ってくれる。

…コウタさんとかだったら、例えば今、おんなのこが何を考えてるか分かるのかな。


「きゃあっ」

「!」


俺の方をちらちらと向きながら歩いていたせいか、何かにつまずいたおんなのこの体が傾く。


「おんなのこっ」


とっさに腕を掴んで引き寄せて、気付いたらおんなのこを抱きしめてるみたいになってた。あわてて離そうと思ったものの、おんなのこの身体のあったかさとか、柔らかさとか、髪からする花のにおいとか、気を取られていたら離すタイミングを失ってしまった。


「…先輩?」「……」


口を開いたら、うーとか、あーとか、情けない声しかでなそうで、無言で抱きしめたままになる。きっとおんなのこは困ってるはずだし、でも、こう今みたいに恋人らしいことも滅多にしないからできるときにやっときたいというか。あ、でも、これ、いつ離せばいいんだろ…。


「ロミオ先輩…」

「!」


内心錯乱状態の俺の背中に、ぎゅ、と控えめに腕が回される。
不思議なことに、落ち着く。
確かに心臓はばくばくだし、顔だってかなり赤いと思うけど、それよりももっとおんなのこを感じてたくて、ふれてたくて。

「あの、さ、おんなのこ」

「はい…」

「キス、していい?」


ぴくり、と肩が揺れた。ぐりぐりと頭を押し付けながら、おんなのこは、うん、と返事をして、いいよって頷いた。
頷いたのを見て、すぐに唇を押し付ける。情けない話だけど、勢いのままいかないとまたタイミングを無くしそうだったから。


「…ん」

「っぷは、せんぱい…」


俺とおんなのこはあんまり身長が変わらない。ジュリウスみたいに背が高かったらっていっつも思うけど。こつり、とおんなのこのおでこにおでこをあてる。こうやっておんなのこと同じ目線で、同じものが見えるなら、悪くないかなって。


「せ、んぱいって、こういうの、慣れてるの?」

「へっ?なんで」

「な、なんとなく…です」


当然慣れてるはずなんてないし、馬鹿みたいに心臓ばくばくだし、カッコ悪いのにさ。おんなのこには俺がどうみえてるんだろう。


「あのね、ロミオ先輩…その、好きです」

「え、お、俺も、だよ…どうしたの?」

「い、いえっ…普段言えないから、言えるときに言おうって」


それって、なんだか俺みたいだ。
おんなのこは、俺の気持ちなんて知らないって思ってた。まあ、気持ちは知らないんだろうけど、普段からおんなじようなことを思ってて。
付き合ってからも変わらず友達みたいなのも、みんなが言うとおり、俺たちが似たもの同士だからなのかも。

あ、でも、なんかよかった。
てことは、俺とおんなのこって似たようなこと思ってるってことだし。
それだったら…コウタさんが彼女さんのことをよく理解してるみたいに、俺も…おんなのこのこと分かってやれるかも。


「おーい、2人ともー!」

「あ、ナナ!」


ゆっくり身を離して、ジュリウスとナナに合流しようか、なんて話をしていたときに、ナナが走ってくるのが見えた。


「せーんぱい!どう?うまくいった?」

「んーなんていうか、ありがと、ナナ」

「え、何々?…よく分かんないけど、どういたしまして!」


もしかしたら、もっとおんなのこに積極的に触れてみてもいいのかもしれない。
帰ったら、定例化しているバガラリー鑑賞会兼彼女自慢をしようと心に誓って。


「おんなのこ、帰ろうぜ!」

「はいっ」


自然と手を取り合って、おんなのこと走り出した。





友達≧恋人

(コウタさん!さっきおんなのこと…って、あ)
(わっロミオか…びっくりした)
(ご、ごめん…彼女さん帰ってたんだ)


ーーーーー
こんにちは。
ご無沙汰してます…。

今回は、企画へのご参加ありがとうございました!
ロミオ先輩が♀主ちゃんとの距離感に悩んだり、もだもだしたり、近づいたりする話でした。

個人的にロミオ先輩は勢いで行動するイメージです。誰よりも場を持たせようとしてくれて、周りの異変というか、変化に気づくのに、行動を起こすまでにいっぱい悩みそうだなあ、と。

恋人という関係になると緊張してなかなか触れられないけれど、慣れてきたらスキンシップ激しそうです。

お待たせしてしまって本当にすみません…。
ご参加頂き、本当にありがとうございました!



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