秘密のおわり




「お前ってかわいい顔してるよなー」

「……、」


次のミッションについてフランと話を進めていたジュリウスはぴたりと言葉を止める。


「…ロミオさん…あの、突然なんでしょうか…?」

「童顔だけど顔ちっちゃいし、目とかくりくりしてるじゃん?あ、あと、色とか白いけど、頬はちょっと赤いとことか!それに…」

「い、いえ…あの…恥ずかしいです…」

「な!ギル!ギルもこいつかわいいなって思うだろ?」

「ああ、そうだな」

「もう…褒めても何もでないですよ?」

「……」

「?…ジュリウス隊長、どうかなさいましたか」


いきなり後ろを振り向き黙り込んでしまったジュリウスの目線をならって見ると、ロビーの端にブラッドの隊員が数人見えた。
配属されたばかりにも関わらず副隊長に任命された大人しい少女と、普段は喧嘩の絶えないギルバートとロミオ。3人の組み合わせは何ら珍しいものでもない。


「ああ、いや…すまない」


フランに声をかけられたジュリウスは、フランをむき直すとバツが悪そうに苦笑した。


…大人しい性格のおんなのこは配属されたばかりの頃、まともにコミュニケーションもとれないくらいな子で。ロミオやナナのような仲間に恵まれ、人並みには会話をするようになったのは、意外にもつい最近のことだと思う。

未だにシエルやギルバートとは上手く喋れないようだけれど、今のように無意識なのか意図的にかは定かではないが、ロミオがフォローしてくれている。


…おんなのこを一言で例えるなら小動物、だろうか。どこか放っておけない気がしてしまうのは、ロミオやナナだけでなくジュリウスも同じだった。


「おんなのこなら自慢の彼女って感じ?」

「? ロミオさん…今日はどうしちゃったんですか…?」

「…、悪いなフラン。話を続けよう」


話を再開したジュリウスは何もないような振る舞いで、フランは一度小さく首を傾げる。しかし、その後はジュリウスの様子も変わらなかったのを見て、特に気にもとめなくなった。


「…好きな奴とか居ないわけ?」

「えっ…えっと…あの…」

「おっ!その反応は…さては、いるな?」

「い、いや、あ、あのっ…」

「…ロミオ、お前流石に突っ込みすぎだろ」

「えーだって気になるじゃん!あっじゃあヒント!ヒントだしてよ」

「ひ、ヒントですか…えっと…」


口の前で両手を合わせ悩む姿はリスが餌を食べているように可愛らしい。


「ヒントは俺から出そう」


コツコツと鳴り響いた靴の音に3人がほぼ同時に同じ方を向く。
片手に数枚の紙を持ったジュリウスが受け付けの方から歩いてきていた。


「ジュリウスはこいつが誰を好きか知ってんの?」

「ああ。勿論だ」

「じゅ、ジュリウスさん…?」

「へえ!誰々ー?」

「それはな…」

「だっ駄目です!秘密ですってば!」


興味津々といった2人の視線を受けたジュリウスは小さく笑い、ぴょんぴょんと飛び跳ねながら必死に止めようとするおんなのこの腕を引いた。


「えっ、んむっ…!」


ぐらりと傾いた先で、ジュリウスの口で口を塞がれる。


「…っふ、や…」


深いものではないもののどこか見せつけるようなキスに抗うことも出来ず身を任せる。びっくりした表情の2人を視界の端に捉え、顔が熱を持っていく。
ちゅ、とわざと音を立てて口を離したジュリウスをおんなのこは涙目になりながら見上げる。


「……これが先程フランと話した今日のミッション内容だ。各自目を通して時間になったら集合してくれ。では、またあとでな」


人数分の紙をぽかんとした顔のロミオに渡し、ジュリウスは涼しい顔で去っていく。

「ず、ずるいですよお…」


顔を両手で覆い、うずくまる。頬も口も…2人からの視線もとにかくあつくて。
きっともうすぐ正気に戻ったロミオがうるさくなるに違いない。

おんなのこは慌てて立ち上がり、ロミオの手から自分の分の紙を抜き取ると、足早にジュリウスを追いかけたのだった。





(ジュリウスさん…!)
(ああ、追ってきたのか)
(さ、さっきの……! 秘密にしようって、ジュリウスさんがいったのに…!)
(つい、な。あまりにも楽しそうに話しているものだから構いたくなったんだ)




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初めまして!
今回はリクエストを頂きありがとうございました(*^^*)

ブラッドのみんなに内緒で付き合っていた2人のお話です。
格好良く嫉妬する隊長を目指したのですが、こんな感じでよろしかったでしょうかっ…。

私なりに精一杯甘くしたつもりです…少しでも気に入って頂ければ幸いです。
また機会がありましたら、よろしくお願いします(*´`*)

今回は企画にご参加いただきありがとうございました!



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