初めまして




「隊長、検査の結果が出ました。2人がブラッドに適合する確率は、かなり高いと言えます」

「…そうか」

「まもなく適合試験を開始します」

「…分かった。少し抜ける」

「隊長?どちらへ…」

「適合試験を見てくる」

「…かしこまりました」


シエルに後を任せて部屋を出る。これでやっと、ブラッド隊の準備が整う。
俺と、シエルにロミオ…そしてキャリアの長いというメンバーが入り…新人が2人入る。


「いや、まだ分からないな」


新人は、もしかしたら1人かもしれないし、入らないかもしれないのだから。

適合試験の場に着いたときには既に1人適合が終了しており、2人目が部屋に入って来たところだった。
想像よりも随分と幼い印象の少女は、ブラッドの中で最年少となる。


「ふふふ」

「?どうしました」

「いえ…あの子、何だか貴方に似ている気がして」

「俺に?」

「ええ。…それでは、これより適合試験を行います…」


試験台に横になった彼女の腕に腕輪がつけられ、天井から巨大な機械が現れた。
自分の試験の時を思い出し、少しだけ眉を寄せる。


『あの、これ…』


スピーカーの向こうから不安そうな、まだ幼い少女の声がした。


「心配しないで。気を楽になさい」

『でも…』

「…大丈夫だ。お前は絶対に適合する」

『…え?』


そして、偏食因子が埋め込まれる。


『う、あああああああっ』

「…」


叫び声。小さな身体が跳ねる。がしゃりと鈍い音を立て、少女は神機と共に床に転がり落ちた。


「適合、失敗、か…?」

「貴方が絶対に適合すると言ったのだから自信を持ちなさい。…ほら、見てご覧なさい」


片手に神機を持ち、少女はふらふらと立ち上がる。ラケルの操作する機器に目をやると、かなり高い数値が見て取れる。


「ふふふ、やっぱりあの子、貴方によく似ているわ。…あの子は…、」


ブラッドにどう影響を与えるのかしら、と呟かれた言葉が…やけに印象に残った。


*


ゆっくりと目を開ける。見慣れた場所。庭園、だと認知して眠っていたらしいと気が付く。背中を木に預けたままぼんやりとする。まだ脳が覚醒しきっていないのかもしれない。


「あ…」


ドアが開く音に目をやると、先日適合試験の場にいた少女が立っていた。


「こんにちは」

「ああ、適合試験お疲れ様。まあ座るといい」


横の芝に手を置いて示すと、少女は小さく頷いて腰掛ける。


「ここはフライアで一番落ち着く場所なんだ。時間があればよくここでぼーっとしている」

「分かります。すごく素敵な場所ですね」

「ああ、気に入っている」


なんとなく沈黙するが、嫌な感じはしなかった。


「あの、」

「ん?」

「適合試験のとき、ありがとうございました」

「…え?」

「あの時の方、ですよね? …お前は絶対に適合するから大丈夫だって」

「あ、ああ。よくわかったな」

「やっぱり!声が同じだったから、そうかなって。私、あの時、優しく声をかけてもらって凄く安心したんです。だから、印象に残ってて。あの、あのっ、お名前を聞いてもいいですか」


くるくると表情を変えながら話す少女。


「まだ名乗っていなかったな。俺はジュリウス・ヴィスコンティ。お前が配属されるブラッドの隊長を務めている」

「えっ…あ、あの、失礼しました…!私、★って言います」

「ああ、あまりかしこまらなくていい。これからよろしく頼む」

「は、はいっ!お世話になります!えっと、ジュリウス、さん?」

「皆には隊長と呼ばれているが、好きに呼ぶといい。…ああ、そろそろ時間だから先に失礼する」


ゆっくりと立ち上がって、改めて少女を見る。小柄な体型にあどけない顔。とてもゴッドイーターには見えないのに、選ばれた女の子。


「★はゆっくりしていくといい。では、またな」

「はいっ!」


…彼女が、ブラッドにどんな影響を与えるのか。

きっと、それは……



(全員揃ったな?では、改めて。ようこそ、ブラッドへ)
(信頼に足る力を、見せてくれ)




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