新人の指導を担当することになりました@
「シエル、新人の指導を頼みたいんだが」
「……」
少し、考える。私には向かないと思う。でも、何か考えがあって隊長は私に言っているのだろう。かしこまりました、と業務的に答えた。
「シエル、この子が新入りの1人だ。…こちらがシエル。俺の補佐をしてくれている」
「初めまして。シエル・アランソンです。今後、君のショートブレードの指導を担当します」
「は、初めまして、★です!よろしくお願いしますっ」
「では、さっそく始めましょう」
隊長と二、三言言葉を交わして訓練所に入る。隊長も数回はオペレーターとしてついてくれるらしい。
『では、基本の動きから行ってもらう。シエル、まずは基本的な構えから頼む。準備が出来たら実際にダミーと戦ってもらう』
「かしこまりました」
言われたとおりに基本的な動きや構えを指導していく。分からないところは反復してくれるし、なかなか熱心な子らしかった。
「隊長、準備が整いました」
『了解した。これよりダミーを使った実戦を行う。今教わったことを存分に発揮してくれ』
「はいっ」
用意されたダミーに向かっていく。初回にしては充分な動きができていると思う。時々、指導を入れながら繰り返すこと、数十分。
『…よし、今日はここまで。明日に備えてゆっくりと休んでくれ』
「ありがとうございました!」
訓練所のドアのロックが外される。こちらです、と案内をしながら部屋を出る。
「あの、今日はありがとうございました!シエル先輩」
「…いえ、私は隊長に従っているだけですので」
「隊長が?」
「はい。君の神機と私の神機が同じ系統だからでしょう」
エレベーターに乗り込み、新人区画を目指す。部屋に送り届けた後に、隊長に報告に行かなくては。
「何度か来たとは思いますが、ここが君の部屋です。あちらから受付に行けますので、規律を守って自由に行動してください。では、本日はお疲れ様でした」
「ありがとうございました!明日もよろしくお願いします!」
「お疲れ様、シエル。どうだ彼女とは上手くやっていけそうか」
「彼女がどうかは解りかねますが、私から彼女を嫌うことはありませんので」
「お前と★なら仲良くやれるさ。では、明日からもよろしく頼む」
「かしこまりました」
隊長の部屋を出て、受付横の階段を下りていくと、先ほどわかれたばかりの新人と、もう1人少女が話しているのが見えた。
「ねえねえ、ナナは訓練どうだった?」
「うーん…イマイチかなあ。★は?」
「シエル先輩、優しくて分かりやすかった!」
ぴた、と思わず足を止める。わかりやすく説明したつもりではあったけど、優しい?
「あ、シエル先輩!」
「えっ!あ、こんにちは!私、ブラッド候補二期生の香月ナナです」
「初めまして。シエル・アランソンです。君、もう出歩いているんですか。自由とは言いましたが、休めるときに休んでおいたほうがいいと思いますよ」
「心配して頂いて、ありがとうございます!でも部屋にいるより誰かとお話したくて」
「…君にとって落ち着く行為ならそれで構いません。では、失礼します」
彼女の第一印象は、お世辞の上手い子だった。
(ねえ、★…もしかしてシエル先輩ってけっこう厳しい?)
(えっ?なんで?)
(な、なんとなく…)
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