お見舞い



※「ロミオと後輩」の続き気味


「んっ…」

息を吸う度に消毒の匂いがする。ゆっくりと瞼を開けると、見慣れない真っ白な天井が見えた。


「目が覚めたか」


がらがら、と控えめな音を立てながら扉が閉まる。


「隊長!」


起きあがろうとしたら、左に重みを感じた。目を移すと、白いニット帽と隠れきれなかった金色の髪が見える。


「ロミオ先輩…?」

「俺が来る前まではコウタ隊長もいたぞ。皆、心配していた」


ロミオ先輩とは向かい側のパイプ椅子に座るジュリウス隊長。


「倒れた原因は睡眠不足だそうだ。…何か悩みでもあるのか?」

「いっいえ…!大丈夫です!ご迷惑をおかけして、すみませんでした…」

「……」


ぽん、と頭に重み。続いて優しく撫でられる感覚。


「年幅もろくにいっていない隊長というのは頼りないものかもしれないが、何かあったら頼ってくれ。きっと力になるから」

「たい、ちょう…」


心配してくれている。どうしよう、すごく悪いことしたなって。


「ごめんなさい、隊長っ!私、実はっ…バガラリー見てただけなんですっ」

「…は?」


始まりは、コウタ隊長とロミオの雑談だった。バガラリーというアニメがあって、すごく面白いらしい。コウタ隊長が全てアーカイブに保存してあるらしく、貸してもらった。そうしたら、すごく面白くて。見ているうちに気付いたら朝だった。


「…と、いうことで間違いはないな?」

「その通りです…ご、ごめんなさい…!」


盛大なため息。あああ、あきれられちゃった…。


「今後は0時前には必ず寝ること。いいな?」

「は、はい!」

「まあ、何かあったわけでないなら良かった」

「だ、大丈夫です。あの、ごめんなさい…」


見るからにしょげてしまった★の頭をジュリウスはもう一度ゆっくり撫でる。


「今は悩みが無かったとしても、ゴッドイーターとしての責任は重いだろう。娯楽があった方がいいと思う。それに」

「?」

「前にも話したと思うが、俺達にはブラッドアーツという特別な力がある。ただ、ブラッドアーツを覚醒させるのは簡単ではないからな…」


こくり、と頷く。


「お前も、ロミオも。皆、きっと自分自身と立ち向かわなければならないときが来る。それは、必ずだ。だが、俺はお前達なら必ず覚醒させることができると信じている」

「家族、だから…?」


ぽつり、と呟くと「ああ、そうだな」と優しく笑ってくれた。ぐしゃぐしゃと頭を撫でてから、隊長は立ち上がる。


「早く、背中を任せられるようになってくれ。お前には期待している」


そのまま、ジュリウスは病室を出た。しばらくして、入れ替わるようにコウタが入ってくる。


「おはよ、★。事情は聞いたよ。ごめんな、俺のせいで」

「いえ!自業自得ですから!」

「俺もたまにやるからさ。お互い気をつけようぜ。っと、★、髪ぼさぼさじゃん」

「あ、これはさっきジュリウス隊長が…」


へえ、とコウタはどこか楽しそうだった。


「最近思うんだけど、ジュリウスってお前には特に甘い気がするんだよな。贔屓とかじゃないんだけど」

「え?」

「さっきだってお前のこと背負ってきたのジュリウスなんだぜ?あ、俺とエリナが応援に行ったんだけど、俺が背負っていこうかーっていったら悪いからいいってさ」

「え、え、え!」

「お前たちって感応現象が起こりやすいじゃん?だったら俺が背負った方がいいってジュリウスなら気付いてたはずなんだけどなー」

「あ、う…!」


隊長が、背負ってきてくれた…?


「…ん、あれ、★目え覚め…て何暴れてんの」

「お、ロミオおはよ」



あっという間にバガラリーの話で盛り上がり始めたコウタとロミオ。そして、★の声が病室に溢れかえっていった。



(私なんで寝てたのー!)
(寝てなかったら背負われる必要ないだろー)






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