キーンコーンカーンコーン

かったるい授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響いて、それまでどんよりとしていた教室内が活気を取り戻した。ナルトとキバはギャアギャア走り回りだすし、シカマルは相変わらず寝ているし。いのとサクラはサスケくんのとこ。それを横目にパタンと形式上開いていた教科書を閉じる。次の時間は何だったかな。

「ナマエ」


顔をあげれば笑顔のサイがいた。サイの白い、私より白い右手に前の時間に貸した私の教科書。


「これ、ありがとう。」
「どういたしまして」


それを受け取る。「じゃあ、また」そう言ってサイは私の席を離れた。もしかしたら、例えばその白い顔を緩めて笑って、空気の読めない発言に私は怒って、けれど心臓は高鳴って、とかいう淡い期待は脆くも崩れ去ってしまった。足りない、足りないよ、こんなあっさりなんて。


「ナマエ」


がくりとうなだれていた私を呼ぶ声に顔をもう一度あげればサイが戻ってきていた。


「ボク大事なこと言い忘れて…」
「大事なこと?」
「仲間に助けて貰ったからお礼しないと」
「そんな、別にイイって」
「お茶とかどう?ほら、ナマエが行きたがっていた駅前のカフェとか」


サイって凄く律儀だ、空気は読めないけど。私はサイとだったらどこでも良いの、心でそう呟いて「ありがとう」と口で呟けばサイはニコリと笑って自分の教室へ帰っていった。その背中にもう、先程より胸は痛まない。だって、私の片思いは着実に進展しているのかもしれない。

キーンコーンカーンコーン

チャイムがなって嬉しい休み時間が終わりを告げる、と同時にまたかったるい授業の始まり。バタバタと慌ただしくクラスメートたちが帰ってきた。


私はサイに返してもらった教科書をパラパラと捲る、ん?はらりと落ちた紙には達筆な文字。見た私は思考停止。
ナマエが好きです。


貸した教科書/title 間者
090613 空峰


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