サイがサラサラと筆を走らせて描き出す世界に癪ではあるが毎度毎度感心してしまう。どうして、こんなに綺麗なんだろう。


「ナマエ、ボク今思ったんですけど」
「ん?」


名前を呼ばれるだけで心臓がどくり、と振動する。


「相変わらず貧乳なんですね。」


…前言撤回!何なのもう!あんな素敵な絵をこんなデリカシーの欠片も無い男が描いてるなんてもはや悲しくなってくる。更に言えばこんなサイを好きな私に自分で腹さえ立ってきた。


「あ、どこ行くんですかブス」
「もう、どこだっていいでしょ!」


あったま来るな、もう。私なんでこんな奴のこと好きになっちゃったんだろう。


「あの、ナマエ、何か怒ってる?」
「…」
「そうだ、ボク、キミに伝えたくて。ナマエ、ボクはキミがすっごく嫌いみたいなんです。」


背中越しから聞こえた声に、身体が凍りついた。やっぱり叶わない恋だったんだ、まだ想い伝えてないのに…振られちゃった。悔しいけど振り向かずにバイバイを言うのがやっとで。だから涙を堪えて顔を上げたら後ろに居たはずのサイの顔が間近にあったものだから凄くびっくりした。


「何泣いてるんですか?」
「泣いてなんか…、」


辛いからこれ以上見つめないで…。サイはさも不思議そうに首を傾げて言った。


「女性に想いを伝える時はストレートにって本には書いてあったんだけどなぁ…」


そう言いながらサイは本をヒラヒラふった。勉強熱心…じゃなくて、どこまで私の傷えぐる気ですか、サイくん。


「それにボクの経験上、女性は思ったことをそのまま言うと怒らせることになるから、真逆のこと言ったんだけどなあ。」
「え、」
「だからボクがさっき言ったことは全部逆なんです。」
「じゃあ、」
「こういうことです。」



サイとの距離が0になった瞬間、私の唇に触れる感触。



Just the reverse is true.
(あ、でも貧乳は嘘じゃないです)
(やっぱりムカつく…!)



090406


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