ブレザーのポケットに入れておいたカイロがすっかり熱をなくして代わりに固まってしまった。ポケットに手を突っ込んで揺すってみてもシャカシャカという軽い音はもう聞こえない。外気はどんどん冷たくなってまるで制服の上から突き刺すようだ。それなのに私にはカイロがない。私はなんだかだんだん悲しい気持ちになる。寒い悲しい。別に表情に出した訳ではなくても白石は敏感だから私に歩調を合わせていた足を止めてどしたん?と私の顔をのぞき見た。


「カイロが冷たくなっちゃった」
「ほんま寒がりやな」
「多分冷え性なんだよ女の子だから」
「女の子?自分そうやったん?」
「しらいしー怒るよ?」
「冗談や冗談、堪忍な?」


クククと喉を鳴らして何の取りこぼしもないみたく完璧に綺麗に笑う。これだけかっこいいから逆ナンされるのも無理もないよねと皆口を揃えて言うけど、私は顔より何よりも白石の優しくてちょっと抜けてる所が大好きだ。溢れ出した思いに私も口元を緩めれば「なあ」と声を向けられた。


「オレ良いカイロ持ってるで」
「まじ?ちょうだい!!」
「ほなら左手出してみい?」
「あ…」



「白石カイロや」なんて瞳を輝かせて無邪気に笑う私の彼氏の右手はとっても温かかった。



10winter/title にやり
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