今日は日直だった。移動教室が多かったので日誌を書く暇が無かったから放課後に残ることになってしまった。ひょーていひょーていひょーていカリカリと紙の上を滑らせていた手がふと止まる。派手な氷帝コールは、きっとテニス部だろう。200人もの部員を抱えるテニス部は全国区で相当強い。しかもそんな中でレギュラーは揃いも揃ってイケメンだったから女子の間でテニス部レギュラーの話題が尽きることはない。中でも部長の跡部は凄い人気でファンクラブまである。毎日友達から聞かされるから全く接点もないのに私は跡部の好きな食べ物まで覚えてしまった。跡部さまってね、ローストビーフヨークシャープティング添えが好きなんだって


「跡部ねえ…」
「俺様がなんだって?」
「え?」


バッと声の方へと目を向ければ跡部景吾、本人がいた。うわあこれは気まずい…。顔を青くした私なんてお構いなしに跡部は私の机に近づく。エアコンの風がちょうど当たる私の席に辿り着いた跡部の金髪をふわりと吹いた風が揺らす。


「えーと、部活は?」
「生徒会があったからな、今から行く」
「そうなんだ」


だったらなぜこの男は教室から出ていかずに私の前の席に横向に座って優雅に足なんか組んでいるんだろう。全くもって理解出来ない。早く行けばいいのに、そんな思いを含んだ視線を投げかければブルーの瞳とぶつかる。跡部の形の良い唇から言葉が紡ぎ出されるのは、まるで何かの美しい芸術品を見ているかのような気がした。


「お前はオレに興味ないのか?」
「…は?」


軽く頭を叩かれたように一瞬思考が停止したような感じがした。目の前の男から信じがたいナルシスト発言が飛び出した。悪いけど私は跡部には全く興味がない。確かに私を見つめるその目は綺麗だ。顔もかっこいいのは認める。だが本当にそれだけ、友達のように今日跡部さまと目が合ったのとかそんなことで喜ぶわけもない。現に今跡部と私なんかが2人っきりでいる、この光景を見た跡部ファンは涙を流し、怒りに震えるだろう。跡部景吾とはそういう男だ。


「あのさ女の子全員が跡部くんに興味あると思ったら大間違いだよ」


あ、しまったと思った時には既に遅く、棘のある一言を目の前の傲慢な男に言ってしまっていた。まあ本音なんだけど。これは跡部の恐らくエベレストのように高いプライドを酷く傷つけることになるだろう。別に彼を好きではないが嫌いでも無かったので謝ろうと思った私の耳に届いたのは跡部の笑い声だった。


「クククハァーッハハ!!」


目の前で笑う跡部を呆然と見つめる私に跡部は頬杖をついて私を見上げる。


「お前面白い女だな」
「え?」
「そういう気の強い女は嫌いじゃないぜ?」


クククと喉を鳴らして笑う跡部に唖然とする私はいつかの友達の言葉を思い浮かべた。跡部さまってね勝ち気な女の子が好きらしいの跡部は笑い続けている。外での氷帝コールと跡部の笑い声が頭の中をぐるぐる廻る。


ひょーていひょーていひょーていひょーてい



アンダーワールド
091217 /タイトル にやり
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