13才春

死に物狂いで勉強して見事に合格した東京の名門校私立氷帝学園中等部。入ってしまえば実質高校受験も大学受験もない。つまりは、これから夢のような10年間が約束されたというわけだ。


入学式が行われる中等部体育館の入り口で心配する両親に笑顔で手を降って別れる。体育館は立派で、思わず足が止まった。これが私立か…!バカみたいに佇んでいた私は「んがっ」という言葉と共に衝撃を受けひっくり返った。



「マジごめん!!怪我してない?」


すっと手を差し伸べて来たのは人懐っこい顔をした金髪の少年だった。私は素直にその手を掴みパンパンとスカートを叩く。ちらりと彼らを見れば「おい、ジローどこ見てんだよ!」とおかっぱの少年がまくし立て「寝てたんじゃねーか?激ダサだね」と長髪の少年が続ける。


「気にしないで、全然痛くなかったから大丈夫」
「マジマジ?良かったあ!」
「気ィ使ってくれてんだよアホ!」


ワイワイと3人は本当に楽しそうだ。凄いなもう友達出来たんだと私が感心しながらみつめていると間もなく入学式が始まります生徒及び保護者の皆様はご着席下さいという放送で我に返る。それはどうやら3人組も同じだったようで慌てふためいて走り出した。


「マジごめんね〜バイバイ」


と金髪の少年が笑顔で手を降ったので私も笑みを返して走り出す。パンフを見ながら漸く見つけた自分のパイプ椅子に座ると、ひやりと伝わる感触がやたらリアルで夢のように感じていた氷帝入学というのは現実だと認識した。自然と上がる口元を慌てて隠す。入学早々変な人だなんて思われたらたまったもんじゃない。


式自体は退屈極まりなかった。どっかのお偉い官僚さんだとか有名な学者さんとか中1の私には価値が良くわからない。欠伸が思わずもれる。式も終盤で新入生代表挨拶に移った。


新入生代表、跡部景吾くん周りの新入生たちもサッと注目したのが空気でわかった。自分たちの代の主席だ。それは気になる。ガリ勉みたいな感じだろうか、そんな予想をした私は数秒後に自分は間違いだったと気づくことになるのだ。長い氷帝学園での生活を語る上で彼の名前無しでは語れない、そんなことになろうとはその時の私は愚か、誰一人知る由もない。


「今日から俺様がキングだ!」




こおりのくに/091219
OVAがとっても良くて、2年前が書きたかったので書きました。
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