やたらと目が合うなあ、そう思ってた。目が合うと言っても彼の目は左目が額あてに覆われているから片方しか見えないのだけれど。その見えている方の右目と私の両目がバチリとぶつかる。その頻度は決して少なくない。ああほら今だって。

ふわふわと白銀の髪を風に揺らして、左手はポケット、右手には彼の大好きな大人の本。それがはたけカカシだった。


「ということなんだけどさ、」
「うん」
「やっぱりカカシって私のこと好きだよね、紅!」
「え?」
「だって気づけばじっとみつめられてるし」


私の推測に紅は大きくため息をついた。念のため言っとくけどみつめられているのは勘違いじゃない絶対。私が忍で視線とかに敏感でもそういうのを差し引いたって尋常じゃなくカカシと目が合うのだから。


「あんたバカね」
「はあ?勘違いお疲れ様とか言いたいんでしょ?」
「そうじゃないのよ」
「えー?」
「はあ…こう考えてみたら」
「ん?」
「みつめられてるんじゃなくてみつめているから目が合う」


んなわけないと鼻で笑った私に紅は二度目のため息をつく。そうして一言言ったのだ。「確かめてくれば?」







待機所で見掛けた銀色の背中をばしんと挨拶代わりに叩くとカカシが滑り落ちそうになった愛読書を慌てて持ち直しながら振り返った。


「カカシやるう〜!」
「お前ねぇ…もう少し普通に挨拶出来ないの?」
「まあまあそんな固いこと言わないで」
「でなんなの?」
「あのさずっと前から思ってたんだけど私たちよく目合うよね」
「ん?ああオレもそれ思ってた」
「でカカシ私のこと好きなの?」
「なんで?オレはお前がオレのこと好きなんだと思ってたけど」
「えー頭がこんがらがってきた」
「でもよく考えればオレお前が男と喋ってるとちょっとイライラするからお前のこと好きかもしれない」


ようやく本から目を上げたカカシが本を閉じた。パタンと2人だけの待機所に音が鳴り響いて沈黙を作る。私はじっとカカシをみつめた。みつめたカカシの真っ黒な目に私が映る。きっと彼の目には私しか映ってない。どくん。


「あ、今ドキドキしたわ」

まだわかんない/100218
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