Bランクの任務を終えたばかりの私は里でおいしい、かわいい、安いと女の子に評判高い喫茶店に寄った。可愛らしい花柄のテーブルクロスの上によく合うオフホワイトのカップがのっかっている。今日はいわゆるホワイトデーというやつで、かくいう私もひと月前、意中の人物に渡そうと張り切って作った。まあまあうまくいったし、しかもその人とホワイトデー当日、つまり今日ツーマンセルだったのもよかった。よかったのだが結局なんのハプニングもなく私はここに1人でいる。おかしい。別にお返しを期待して渡した訳では断じてないが、彼はバレンタインデーの日に「じゃあ1カ月後に返事するよ」と笑顔で言ったものだから私はてっきり今日ラブハプニングがあるものだと思っていたのだ。ふられる覚悟はしてきた。それなのに何も音沙汰がないのは悲しい。ふるならきっぱりふってほしい。頼んだ紅茶を流し入れるようにして飲むと甘すぎて思わず眉間にしわが寄った。


「こちらになります、ご注文は何になさいますか」
「え?」


店員さんの声に顔を上げた私は相当な間抜けヅラをしていたと思う。私の意中の人物、サイが真正面に腰を下ろしメニューを睨んでいたからだ。


「はは、何固まっているの」
「いやいや、え、サイ…なんで?」
「今日はホワイトデーだからね、ナマエの気持ちに返事をしないと」


そう言ってサイは熱い氷みたいな、よくわからない笑顔を私に向ける。いつもサイは何を考えてるのかよくわからない。それはサイが根出身であるが故の職業病というやつなのだろうと私はいつも結論づける。


「ボクもキミが好きだよ」
「そっか…え?」
「もちろん恋愛感情でだよ」


サイはいつもと変わらない笑顔で笑うけど私の頬は今すごい赤く染まっているだろうしニヤニヤしていると思う。けど上がる口角が下がらないから仕方ない。


「ねえ、私今すごい変な顔してない?」
「いつもと変わらずアホっぽいよ」
「…」
「まあ、ボクはそんなキミが可愛くて可愛くて仕方ないんだけど」



蜜蜂の小指


100314 /タイトル にやり
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