※芥川と立海に行く話
※丸井と真田がちょっと出ます



放課後に借りた月刊誌を返しに行ったら珍しくジローちゃんが起きていてリュックを背負って教室を飛び出る所だった。失礼だけど雪でも降るんじゃないかと思った私にヒマ?と彼は聞いて恐る恐る頷いた私にいいとこ連れてく!と叫んであれよあれよという間に神奈川まで連れてこられた。


「あのさ…ここ立海の最寄り駅だよね?」
「当たり」
「立海に用事でもあるの?」
「うん!丸井くんに会いに行くんだ!」
「…」


スタスタと早足になるジローちゃんをほとんど走って追いかける。途中でコンビニに寄って、お菓子を大量に買い込んだ。私が怪訝な顔つきでそれをみつめると差し入れ!と、にっこり笑う。


「マジマジほんとすっげーんだ!!」
「やっぱり勝手に入るのはまずいってば」
「大丈夫だって!」


ぐいぐい引っ張られて立海の敷地内に入ってしまった。氷帝の制服に身を包む私たちは端から見たら不審者そのものに違いない。実際時々通る立海生がひそひそしている。先生とかにチクられたらどう言い訳しよう。ジローちゃんは私の心配なんかどこ吹く風で鼻歌なんか歌ってる。


「あの赤い髪が丸井くんだよ」
「へえ」


丸井くんは髪が赤い以外は意外と普通の男の子だった。すっげー強い!天才的かっこE!とジローちゃんがいつも騒いでいるから私は人外的なものを想像してたけどなんてことはなかった。その辺のサイゼのドリンクバーでコーラ飲んでいそうな感じだ。その丸井くんが気づいてこっちに近づいてきた。ボールがラケットの上でポンポン跳ねている。


「ジロくんじゃん」
「丸井くーん!おつかれ!」
「どうよ、オレの天才的妙技は?」
「マジマジすっげーかっこEよ丸井くん!」
「だろぃ?で、そこの子は?」
「あ、どうもジローちゃんの友達の名字ナマエです」
「おうシクヨロ」


丸井くんは結構感じの良い人で親しみやすいタイプだと思った。あの時の試合はどうで、ボレープレイヤーがうんたらで、ここのラケットは良いだのという話をジローちゃんと楽しそうにしている所に、黒い帽子を被った顧問の先生が「丸井!たるんどるぞ!!」とびっくりマークを2個つけて怒鳴ったので丸井くんは膨らませたガムをパチンと割って慌てて戻っていった。私は、というと自分で漫画みたいに顔がさあーっと青くなるのがわかった。「ヤバいよ行こう」とリュックを綱引きかというくらいに精一杯引っ張ったけど「丸井くんのプレー見るんだC〜」と意気込んで座り込んでしまったジローちゃんはびくともしない。そうこうしてるうちに帽子を被った顧問の先生は腕を組んでズンズンこちらに向かってくるし、ジローちゃん言うこと聞いてくれないしで私は泣きたくなった。


「氷帝の芥川か」
「あ、真田じゃん!」
「ジ、ジローちゃんダメでしょ!!いくら他校だからって先生のこと呼び捨てにしちゃ!」


ジローちゃんの頭と私の頭を地面につきそうな勢いで下げる。誠意な姿勢が大事だとお母さんが言っていた気がする。


「すいませんでした!さようなら真田先生」
「ナマエ何言ってんの、真田はオレらとタメだC」
「…え?」
「立海大付属中学3年真田弦一郎だ」


強勢の位置は3ですと英語教師が言うかのように真田…くんは3を強めた。本当に顔を青くしてそのまま土下座をしたのは言うまでもなく、当の真田くんはたいそうご傷心の様子であった。それからこのことは立海テニス部でしばらくよい笑いのネタになったというのを丸井くんがサイゼでコーラを啜りながらおかしそうに話してくれたのでした。



勘違い/100418
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