日本の大阪府のある所に女の子がいました。この春から中学3年生になるミドルティーンという当に、花ざかりの女の子なのでした。東京から引っ越して来た彼女にとって、大阪とは未知の場所。芸人さんが話すのをテレビで聞く程度だった関西弁があちこちを飛び交います。エスカレーターは本当に右に並んでいたし、たこ焼きは美味しいし、街の人は親しみやすいしで何もかもが新鮮に感じられ魅力的な場所です。彼女はすぐに大阪が大好きになりました。


引っ越してしばらくは荷物の整理をしたり、東京の友達と長電話したり慌ただしくしていたのですが、それももう3日目となった今日、ふと4月から通うことになる四天宝寺中学に行ってみたくなりました。明日にでも母親と先生の所へ挨拶に行く予定でしたが、中学校最後の一年を過ごす場所を早く見たくてたまらなくなってしまったのです。ぽかぽかする日差しを全身に浴びて彼女は通学路を歩きます。


「本当にお寺みたい」


まるでお寺のような門の外観に独り言が突いて出て、誰かに見られやしなかったかと慌てて首をくるくる動かします。ちりんちりん、と買い物袋をカゴに突っ込んだおばさんがチャリで通過するのが見えただけでどうやら、誰にも聞かれてなかった様子に安心して胸をなで下ろします。それにしても変わった門です。これも大阪クオリティなのだと半ば感心しながら恐る恐る敷地内に足を踏み入れました。


「うわあ…」


思わず感嘆の声を上げて彼女は目を見開きました。四天宝寺の敷地はとても広く、それは予想を大きく上回るものだったからです。感心して校舎や講堂を見入る彼女は、目の先わずか2メートルを男の子が通過したのに気づきませんでした。男の子は見慣れない女子がいることに少し驚きましたが、好奇心も手伝って彼女の方に目を向けたまま1歩2歩と足を戻します。じゃり、と靴が砂をこする音がしたところでようやく気がついた彼女は男の子に目線を合わせました。


「自分見ない顔やな…新入生か?」
「いや、転校して来たんです」
「何年?」
「春から3年です」
「おお!オレも次3年やで、タメやんけ」

男の子は器用に、くいっと口角を上げて微笑みます。どくん、と1回心臓が跳ねました。男の子はとても綺麗な顔をしていることに彼女は気づいてしまいました。


「ほな、また新学期会えるとええな」
「あの」
「ん、なんや?」
「な、名前は?」
「白石蔵ノ介やで、よろしゅう」


白石くんはもう一度微笑みを彼女に向けて長い指を振りながら去っていきました。体の芯を抜かれたかのように、へなへなと彼女はその場にしゃがみこみました。しゃがみこんで左膝にピッタリくっついた左胸がどくんどくんと速く動くのを感じました。その夜なかなか眠れなかったのは言うまでもありません。


あっという間に時間は過ぎて始業式の朝になりました。パリパリのブラウスに袖を通すと身が引き締まるような思いがします。学校に着いてまず掲示板に貼り出された生徒一番の関心事であるクラス表を眺めます。ざわざわと人だかりが出来ているその山を爪先立ちをしてなんとか越えて見ると彼女の名前は2組のところにちゃんとありました。自分の名前より上の人の番号をじーっと遡って14番まで来た所で彼女の目はピタリと止まりました。白石蔵ノ介、白石くんの名前を見つけたからです。どくどくと鼓動が再び速くなるのを感じたので慌てて教室に向かいます。


教室の目の前まで来たのはいいのですが、転校なんて初めてだった彼女は急に不安に襲われ立ち止まってしまいました。なかなかドアを開けられません。彼女は心底困り果ててしまいました。そんな彼女の肩を誰かがぽんぽんと2回叩きます。


「久しぶりやな、覚えとる?」
「白石くん!」
「当たりや。まさか同じクラスになるとは思わんかったわ」
「うん」
「緊張しとんの?」
「ちょっとね」
「オレがおるから大丈夫や。なんか困ったことあったら何でも言うてくれてええからな」
「ありがとう白石くん」


白石くんがそう言うなら本当に大丈夫な気がしてしまうのでした。彼の言葉で緊張の糸がほどけた彼女をクラスメートは温かく迎えてれたので直ぐに打ち解けることが出来ました。それから毎日、楽しく学校生活を送れているのは白石くんのおかげで彼女はとても感謝しているのでお礼を言いたいのですがいつも既の所で逃げ出してしまうのです。そのせいで最近は胸が痛くてたまらないのだということをようやっと白石くんに伝えたら彼は彼女が大好きな笑顔で「それ恋してるんとちゃう?」と言いました。途端に真っ赤になってしまった彼女を白石くんが「好きや」と言いながら抱き締めたのは2人しか知らない話なのでした。





100414 白石happybirthday!
title :にやり
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