ざっぷーん 海は広い、大きい、青い。これだけ広い海の先、ずっと先にはどんな世界が広がっているのだろうか。そしてもしかしたら行き着いた先、私がいる海の反対側の海で私と同じようにずっと先に思いを馳せる人物がいるかもしれない。そんなことをぼんやり考えていると下から声が昇ってきた。 「なにしてるの?」 「わ…!」 音源を見やれば、サイがぷかーっと浮いていた。浮いたまま、彼の墨のように真っ黒な瞳だけをこちらに向けて私を見ていた。 「そんなびっくりしなくても…」 「いやびっくりするよ」 ざぱーっと涼しげな音と共に起き上がったサイの白い白い透き通るような肌に黒い髪がよく映えている。流れ落ちる水を拭いもせず代わりに私の手を取る。色が白いからてっきり冷たいと思っていたサイの手が予想以上に温かくて思わずサイを見上げる。そんな私の反応は予想していたのか小さくにこりと笑うとサイは歩き出した。私は引かれるがままサイの少し後ろを歩く。振り返ると海と空の境界線が赤く染まっていた。 「ねえサイ」 「なに?」 「この海の反対側には何があるのかな」 「行ったこと無いからわからないよ」 「なんか向こうにも同じように誰かがいるかもね」 「ふーん、じゃあみせつけてやらないとね」 優しく笑ったサイは手だけじゃなくて全部熱かった。 反対側の海 100730/前サイト改 |