どうやら今年の夏は記録的猛暑らしい。というのをニュースなんてほとんど見ない私ですら耳にタコが出来てしまうくらいに聞いた。最高気温が35℃とかなんとかいうのは確かに神奈川ではおかしな話だと思う。日本海を飛び越えて位置する大国ロシアでも水浴びしている人たちがテレビに映し出されていた。ロシアは冷帯で寒いはずなのに。地球は相当ヤバいのではないかというのを丸井に話したら「地球温暖化だからじゃねぇの?まあ冷たいもん更に美味くなるから良いけどな。それよりアイスくれ」なんて言いながら右手を突き出してきた。信じらんない。丸井が出してきた右手をつねってやった。


「いてえ!」
「人が真剣に話してんのにもう」
「んなこと言われたってなあ。ていうか次アイス買いにいくのお前の番だろい」
「えーこんな暑い中購買部まで行きたくないよ」


朝登校中に箱買いしたパピコは丸井のお腹に8割私のお腹に2割仲良く消えていった。いや、待って私2割しか食べてないのにワリカンって不公平じゃないか?もし地球に終わりが来てしかも丸井と2人で生き残ったら絶対食べ物全部持ってかれる気がする。不安だ。机の中からポッキーを取り出して食べ始めた丸井に不平不満プラス不安を告げるとこちらを向いて口を開いた。


「もしそうなったら全部お前に食いもんやる」
「うそ?食べなくていいの?」
「うん、そんで食べごろになったらお前をオレが食う」
「ふーん共食いってやつ?」
「つーかよく言うじゃん、食べちゃいたいくらい可愛いって」


暑さで頭やられちゃったのと聞きたかったけれど止めた。丸井の口にポキポキ軽い音を立てながら消えていくポッキーを見ていたら嘘に思えなかったなんて私もおかしいから。ずっと見つめていたら小さいころに見たアニメみたいに口の中に吸い込まれていくような感覚がした。真っ暗。


「いやか?」
「別に丸井になら食べられてもいい」
「なんかエロく聞こえるわ」
「ばーか」
「ワリィな、まあとりあえずたくさん食ってもっと美味くなれよー」


丸井はケラケラ笑って私の口にポッキーをねじ込んだ。広がる口内の甘さを堪能する間もなくポッキーの反対側に重さがかかる。重さ、イコール丸井。距離8センチ。いっそ口を離してしまえばいいのかもしれない。或いはこのまま成り行きに身を任せるのもいいかもしれない。結論を言うとどんどん短くなるポッキーに私の思考は追いつけなかった。


「ごちそーさん」
食べごろ/100831
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