※学生設定 「ハア」 「ため息つくなよ。ハア」 「キバだって」 「なんかオレ終わる気しねえ」 「だいじょうぶ、私も」 吸い込まれそうな青空の下で私とキバのため息が響く。シャコシャコとブラシの擦れる音にも飽きてきた。もうこのプール掃除を始めていったいどれくらい経ったのだろう。 「なんでオレらがプール掃除なんだよ!」 「カカシ先生ひどい…!」 「ったくなんであの日に限って遅刻なんか…」 「ケータイの充電が切れるなんて…」 「そういう日に限って、起こしてくんねえし」 「キバってまだお母さんに起こしてもらってんの?」 「いや赤丸に起こしてもらってんだよ…ってニヤニヤすんな!」 教室では強がりムードメーカーなキバがお母さんの前では小さくなってるところを想像したら思わずニヤついてきた。キバは「笑うな」って怒ったけど実際キバんちではお母さんが最大権力を誇り、独裁政治を行っていそうだ。弱いキバとか見てみたいな。なんて言ったらキバはそっぽを向いて「ちげーよ」って言ったけど今度は声小さかった。私はくすくすと笑う。キバ面白いなあ。 「お前なんか楽しそうだな」 「ぜんぜん!」 キバは呆れ顔で「そーかよ」って言った。けど本当は私、言うほどイヤじゃない。だって好きな人との共同作業なんてとっても素敵だと思うから。グッジョブ先生!それに今日は日曜日だから学校には私とキバしかいない。二人っきり。(職員室には先生がいるけど) 「二人っきりかあ…」 「ん?なんか言ったか」 「い、いやなんでもないよ」 なんでもないなんでもない。チラリとキバを見れば、私と喋ってばっかりだったというのに作業の差は歴然だった。キバはやるときやる男なの。そこも好き。愛の共同作業(と呼ぶことにする)の成果あって見事に掃除を終わらせた私たちは水を溜めていた。こっからが長いのだ。プールサイドに並んで寝転ぶと初夏の太陽がサンサンと降り注ぐ。欠伸を1つすると隣ではキバがもう寝息をたてていた。私も目を閉じる。だいすきなキバの隣で。 ・ ・ ・ 「おい起きろよ」 「ん…」 「水溜まったぜ」 「うわあ…!」 飛び起きれば水はもう一杯だった。水面に太陽光が反射してキラキラと光る情景が目の前にはあった。 「さて帰るか」 「うん…あれ?」 キバの言葉に勢い良く立ち上がった私は悲劇的なことに足を滑らせた。とっさにキバが右手を差し出してくれて私はその手を掴んだ。が、そのまま雪崩れ込むように私とキバはプールに飛び込んだ。 「ご、ごめん…」 「…」 漸く水中から顔をだして謝ればキバは肩を震わせていた。怒ってる…?じわじわと自己嫌悪感と焦燥感が押し寄せてくる。私バカすぎる…。 「ぷ」 「ぷ?」 次の瞬間キバはあはははと盛大に笑い出した。「腹いてえ」と言いながら私がだいすきな彼の犬歯を見せて続けた。 「お前最高!」 眩しい彼の笑顔でどくんと心臓は高鳴る。 「ん?お前顔赤いぞ?」 「ちょっ…」 「熱か?」とキバの右手が私の額に乗っかり、もう一度どくんと心臓は高鳴った。私は熱を帯びた頬に耐えきれなくてプールに沈んだ。 恋とプールに飛び込んだ title にやり 090721 130804改 キバとプール掃除したい! リサイクルスペシャル3 |