「かわええなあ」 ころがされてるなあと思いました。スカートのプリーツを後ろ手で直しながらあなたの間に座ります。ぎゅっと抱き枕のようにお腹に手が回りました。私は白石の行動からあのうさぎさんのながあい抱き枕を思い浮かべて自然と頬がゆるんだのです。 「なに笑とるん」 「なんか白石がうさぎさんみたいだなって」 ほら、そのきれいに整ったお顔とか、ミルクティブラウンの艶やかな髪とか。 「ああそうだ、さみしがりやなとことか」 「うさぎみたいとか他の男の前で言うたらあかんで」 なんで、言う間もなく肩に感じる重みと頬のくすぐられる感触。寄せられた耳元で白石は言いました。 「うさぎっちゅーんはやりたがりなんやで」 思わず浮いた私の肩に白石はくすくすと笑みをこぼしました。そして言うのです。 「ほんまかわええなあ」 白石は満足そうに目をとろけさせると手をほどき、私の髪を掻き分けてうなじにキスを落としました。次々と降ってくる白石の温度はまるでオーダーメイドしたかのように、私にぴったりと合うのです。どちらのものかもわからないくらいにぴったりと。そして私はどこぞの少女漫画のように至極ありきたりな台詞を口にするのです。 「このままひとつになっちゃえばいいのに」 本当にさみしがりやなのは私の方なのです。わかっていました。別れ際のさみしさも、電話を切った後のさみしさも私の胸をちくちくと刺すのです。また会える、そう頭ではわかっていても半絶対的ではありながら100パーセントの確証を得られないことへの不安が私にはあったのです。我ながら重い女だと思います。白石には言ったことがありませんが。 「なら、なろか」 ふるえる肌をあたためる毛布のように白石の腕が私をくるみます。私もそろりと背中に手を回せば、さらに力は強まります。ぎゅうぎゅう、ふたりの間に隙間なんて感じられません。ああ白石好きだなあって思うのと、形を確かめるように唇が触れられたのは同時でした。 「やっぱり、俺うさぎやな…」 ひょいと音でもするように私を抱きかかえた白石はさすが全国区のテニスプレイヤーだなと思いました。なめらかな白石の額が私の額に乗っかって思わず瞬きすると「好きでたまらんわ」とこぼすのです。まるで世界には私と白石しかいないみたい。私も白石が大好きです。きっと彼もわかっているでしょう。ゆらゆらと幸せに浸りながら私は白石の頬に手を寄せたのでした。 ぴょんぴょん/130210 |