※侑士が最低かも
※背徳的
※あるはなしにつながるおはなしで連載になるかも


蝉の声、風鈴の音。眩しい空の青、深い木々の緑。ぜんぶ美しくて大好きだなぁ。って言ったら侑士がナマエはほんま夏が似合うなあって涼やかに笑った。対照的にじわりと熱が私を満たす。答える代わりに、はにかんで、上履きに視線を落とす。思っていても、侑士の藍色の髪も好きだよ、とは言わない。言えない。言っちゃいけない。するすると髪を撫でられて後頭部に手が回される。あ、キスされるな、と思って目を伏せたところで、侑士の携帯が振動を始めた。鳴る着信音に一体化するかのように張り詰める空気。スマン、と私に言う。

「もしもし、どないした?」

きゅっとスカートを握りしめた。侑士は、おんとか、さよかとか相槌を打ちながら瞳を閉じた。愛おしそうに、閉じられた瞼と優しい声。それが私に向けられたものではないことが、その意味が脳内をぐらつかせた。だから、侑士の電話が終わったことなんて、ガタンと椅子を引く音を耳が受容するまでちっとも気づかなかった。

「先輩…?」
「せや、スマンけど」
「ううん、平気だよ。またね侑士」

平気な訳ない。行っちゃやだよ、侑士。でも、言えない。私は侑士の彼女じゃなくて、ただの都合の良い女でしかない。呼べばすぐ来る女。彼女がいるのに、私と恋人まがいのことをする侑士。彼女がいる人と恋人まがいのことをする私。どっちも最低で、でも止められない。膝を抱えて、晒されたそれに押し付ける。どうしようもなく切なくて、どうしようもなく侑士が愛おしかった。窓から漏れる西日が教室にオレンジを塗りたくる。ただひたすらに、幼く、恋に生きていた十五の夏のことだった。

ひまわりの頃に
120818/title たかい
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