「なぁんか、全体的に怪しいな」
「………そ、うね」


世界が再生される。天に登る塔、天へと登る塔。目指したものは同じだった。目指した理由も同じだった。だからこそ、嫌な予感がするのだろう。それに、私は彼奴との"契約"がある。悪くはない話、ではあった。でも、やはり躊躇うのは当然で、ここまできた。


「世界再生、神子、天使。それに…」
「衰退と繁栄。繁栄の象徴、救いの塔」
「…セレネ、気付いてるよな?」
「嫌ね、私を誰だと思って?」

先程、鋭い視線を向けてきた彼の話だ。音素、この世界で言えばマナ、だろう。普通の人は魔術を使えない、らしい。それでもクラトスが使えるのには理由があるのだろうけれど、それにしても異常だとは思っていた。その答えは今は分からない。だから苛々するのだろうけれど、


「ま、とにかくセレネの好きなようにしようぜ!って話」
「…そんな話だったかしら…」
「いいんだって。そうしとこうぜ」

楽しそうににやにや笑うシエルにため息をつく。自分で、最近似てきたなぁ…なんと言っているものだから手に負えない。

「…向こうに行ったら混乱しそうね…」

シエルの朱色の髪を見ながら呟いた。私が行くといえば、来るのだろう、きっと。彼ととても似ている髪の色にため息をつく。


「…どこ行ってもこの髪は目立つんだよな…」
「なら染めたら?」
「やだよ、めんどくさい」

そんな話をしている間にも、ウンディーネとの戦いは続いている。けれど、そろそろ戦いも終わりそうだ。会話をやめて、ロイドたちを見ていた(物凄くシエルがはらはらしていたみたいだけれど)


2戦連続のせいか、すっかり疲れていたロイドたちに、苦笑いしながらリザレクションをかけてあげた。もう戦闘は終わったのだから、関与した、ということにらならないだろう。

「見事です。では、誓いを立てなさい。私との契約に何を誓うのですか?」
「今、この瞬間に苦しんでいる人たちがいる。その人たちを救うことを誓う」

しいなの言葉を聞いたウンディーネは静かに頷いた。そして、契約の証である指輪をしいなは受け取っていた。それを、リフィルが横から笑顔で見ているのが分かる。やたら目が輝いている。今、リフィルにあの契約の指輪を渡したら大惨事だろう。世界によって、契約の証は異なるのね。なんて思いながらその光景を見ていた。



「再来よ、この世界の封印は解かれました。貴方になら対を呼び出すことが出来るでしょう」
「……対…?」

ウンディーネの言葉の意味が分からずに、私が首を傾げる。その様子を見たジーニアスが助け船を出してくれた。

「えっと、今までの封印は火と風と」
「水でしょ?」
「ん?マナの塔の封印はどうなるんだ?」
「……光、じゃないのか?」
「おー!しいなスゲェ!!」


マナの塔はこれといった特徴がなかった。なのに的確に言い当てたしいなに、ロイドやリフィルが感心していた。最もテセアラに闇の神殿があるから分かったのだろうけれど。

「その対って…」
「雷、土、氷、闇だね」
「あら困ったわね。シャドウとノーム以外知らないわ」
「…第四と第三か?」
「恐らくは…」
「第さ…?」

精霊の種類や数まで違うなんて、めんどうね。そう思いながら、一つ分かった。シルヴァラントにいる精霊はテセアラにいれば召喚出来る。逆にテセアラの精霊はシルヴァラントでなければ召喚出来ない、というわけだろう。最も、そこまで音素の意識集合体を使役する気にはならない。媒介は剣しかないわけだから、なくなってしまったら困るし。言い残したウンディーネは既にそこにはいなかった。興奮が収まらないロイドとリフィルを残し。


「シエルとセレネは、前衛ね!」
「戦闘よろしく〜」
「はぁ?!」
「お前たちは2戦とも戦わなかっただろう」
「……分かったわ。どうなっても知らないわよ」
「あ〜前衛久々だなぁ…」
(……あれ?僕何かまずいこと言ったかな)


クラトスやジーニアスに言われ、帰り道は私とシエルだけが戦闘していた。見事にロイドたちは戦闘に関与せず。魔物相手だったせいか、比較的楽に倒していた。その様子を見ながら頭を抱えた人間が、数名。


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