今回の封印の守護者は比較的楽に倒せた。私やシエルはあまり戦闘には関与せず、後方のジーニアスやリフィルのフォローに回っていたのだけれど。大陸を横断したことや、人間牧場に潜入してきたこともあるのだろうか。

「大地を護り育む大いなる女神マーテルよ。御身の力をここに!」

コレットの声で、祭壇の上空から一枚の羽が落ちた。それとほぼ同時に、天使レミエルが姿を見せた。



「…本当に、再生されちまうんだね」
「しいな、貴女本当にいいの?」

コレットやレミエルが話をしているところからは離れて、私としいなはその様子を見ていた。私の言葉を聞いたのか、しいなは少しばかり驚いたように目を見開いてきた。

「セレネ、あんた…」
「私は許さない」

世界再生。それは、その終着には再生の神子の死がある。それは、神子の死と引き換えに得られる再生。神託を下すのは、クルシスだと聞いた。八百年。八百年も繁栄を続けたテセアラ。もし、テセアラが繁栄時代を終えたら、神子はどうなるのか、なんて。分かりきっている。

「私は、認めない」

シルヴァラントの世界再生。認めたくないんだ。誰かを犠牲にして、得た平和なんか。そんなもの、存在しないと私たちは、あの旅で知ったのだから。羽を出して、レミエルの消えた祭壇を唇を噛みながら見ているコレットの背中を見ていた。そんな私を、静かにシエルが見ていた。



そして、もう一つの理由がある。恐らくそれは誰にもわからない。世界再生、嫌な予感しかしないのだ。多分きっと、それもシエルは気付いている。


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