今まで放置されていた…いや、放置していたわけではないのだけれど。呆然としているロイドへと振り返れば
ばっちりと視線が交わった。困ったように少し笑って、そのちょっとあった距離を埋めるように足を進める。

「ロイド、何故貴方が此処に?」
「分かんねぇ」

聞けば、どうやらトリエットからユアンに無理矢理連れてこられたらしい。正確に言えば、ユアンではなくレネゲードに、らしいけれど。どうしてロイドが、と考えていると、そんな暇もなかったらしい。慌ただしく扉が再び開き、ロイドと2人で警戒しながらその扉へと視線を移す。警戒の必要がないと気付いたのは、その直後だった。



「ロイド!…あれ?セレネ!!久しぶりだね〜!」

不意に耳に入ってきた声に、ロイドと一緒になって目を見開いた。そこには笑顔を浮かべたコレットがいて、どうしてコレットが1人で、なんて思っている間に私に飛びついてきた。それを受け止めて立たせる。それかた立て続けに、扉は閉まる気配を見せずに何人か雪崩れ込むようにして部屋に飛び込んできた。

「コレット!危ないって………セレネ?!」

あとからジーニアスが走り込んできて、続くようにしてもう1人。見覚えのない人だったけれど、私を見て驚いたような表情をしていたのが分かった。その驚く表情に、少しだけ違和感を覚えた。ひょっとして、ユアンと同じ理由だとしたら。あいつが逃げたことにも納得がいく。…まぁ、あとで聞くのが一番かしら。

「セレネ!?あなた…」
「久しぶりね、リフィル」

最後に部屋に現れたリフィルに、困ったような笑顔を向ければ、呆れたようなため息をつかれた。頭を抱えたい気分なのは私も一緒、なんて思いながら、それに特に反応も見せずに一同を見渡す。少し遠くから足音が聞えることから、ロイドを…もしくはコレットたちを狙って此処にレネゲードが集まり、始めているのだろう。持っていた剣を鞘に納めて、先ほど手に取り戻した音叉を手に握った。

「さて、逃げるわよ」
「どうやって?!」

ジーニアスが驚いたようにこちらを見た。此処までレネゲードが…彼らはまだディザイアンだと思っているのかもしれないけれど。が迫ってきていることには気付いていたのだろう。握っていた音叉を掲げるように一同に見せながら、ふと笑顔を浮かべた。

「超振動、でね?」

勿論、私自身が1人で起こせるものではないんだけれど。そう小さく呟きながら、その言葉を理解出来たものはどのくらいいるのだろうか。オレンジ色の淡い光が辺りを包んだ。


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